担い手不足は除雪作業でも…将来の人材確保へ快適な職場づくりを
建設業で担い手不足が深刻化する中、新潟などの雪国では除雪運転手の安定的な確保が課題となっている。
新潟県土木部によると、県管理の県道・国道の除雪を担当する運転手は2022年度時点で2735人で、毎年数十人ずつ減っている。
道路脇の雪を飛ばして道の拡幅除雪を行うロータリ除雪車=二居(ふたい)除雪ステーション
日本建設機械施工協会北陸支部(新潟市中央区)が2022年度に国や新潟県、富山県、石川県から道路除雪を請け負う建設業者118社(回答は114社)に除雪オペレーターの確保状況を尋ねたアンケートでは、「十分である」と回答した事業所は全体の13%にとどまった。
車両中心部のブレードで道路の雪や氷をはがして路面環境を整える除雪グレーダ=二居除雪ステーション
群馬県境に近い新潟県湯沢町三国地域の除雪を担当する「文明屋」では現在、オペレーターは不足していない。ただ、今後の担い手不足への心配は尽きない。文明屋の大野康代表取締役(71)は「人材の獲得競争が激化する中、今後、現行の除雪態勢の見直しを迫られる可能性は高い」と見込む。
車両前方にある除雪板で雪を道路脇によける除雪トラック=二居除雪ステーション
文明屋では人材確保に注力し、60年にわたり磨き上げた技術を若い世代へ継承する考えだ。大野代表は「まずは社員が安心して、快適に働ける社内環境を作ってきた。それが将来の人材確保につながる」と話す。
二居除雪ステーションで除雪人の食事作りを担う大野正子さん。名物の自家製野沢菜漬けを食べて出動するのが「ルーティン」になっている
毎年積極的な賃上げを図り、2023年は約3%上げた。「しっかり休んで仕事の英気を養ってほしい」と休暇が取りやすい社内環境も整備。1997年には「社員が一息つける場所をつくりたい」と、宿場町だった二居(ふたい)=湯沢町三国=にある二居除雪ステーションに温泉設備を設けた。
二居除雪ステーション内に設けられている風呂。従業員の疲れを癒やす
福利厚生に力を入れることで、新卒・中途採用にも好影響が生まれている。文明屋では地元の塩沢商工高校の卒業生を中心に受け入れている。2023年度は7人、22年度は8人を採用した。
◆感謝と尊敬の思いを込めて、除雪人への応援ソング「飛ばせ!ロータリー!!」作詞・作曲は“国土交通省コンビ”
道路の除雪作業に当たる人たちに熱いエールを送る応援ソングが誕生した。歌のタイトルは「飛ばせ!ロータリー!!」。作詞したのは道路管理者でもある国土交通省北陸地方整備局(新潟市)の道路部長、武藤聡さん(60)。「ありがとうと尊敬の思いを込めて書いた」という。(論説編集委員・三島亮)
国土交通省北陸地方整備局道路部長の武藤聡さん
武藤さんは2022年6月、新潟県など豪雪地域を所管する現職に赴任した。短期集中的な豪雪に見舞われた22年12月〜23年2月の冬期。国道などでの車両立ち往生の解消や防止に向けた対応に追われる中で、懸命に除雪に取り組む従事者の姿に感銘を受けたのが、歌作りのきっかけだ。
「使命感と責任感 昼夜に渡る過酷な作業 何度も何度も出動し 何事もない朝のため」
日が暮れても続く国道17号の除雪作業=2022年12月、長岡市
2023年1月には、武藤さん自身も整備局の災害対策本部で3日間続けて朝を迎える経験をした。ようやく除雪完了のめどがついた時、職員と除雪機械の話をしていたら、歌詞が自然と浮かんできた。強い使命感と責任感、高度なスキルを併せ持つ除雪作業従事者。武藤さんはリスペクトの思いを込め「除雪人(じょせつびと)」と呼ぶ。
作曲は国交省技術者OBで先輩の設楽隆久さん(63)に依頼した。武藤さん自らが歌う。実はこの2人、道の駅が誕生してから30年となった23年に、応援ソング「廻ろう!巡ろう!道の駅!!」を作詞、作曲したコンビだ。
[関連記事]目指せ紅白!?新潟県発「道の駅」応援ソング誕生…本家に負けない大ヒットなるか?
「設楽さんは長野勤務も経験しており、除雪人への尊敬と感謝の思いは同じ」と武藤さん。「除雪人がいてくれるからこそ、私たちは冬期も毎朝車で走られる。そうしたことを理解し、ありがとうの気持ちを持ってほしい」と願っている。
× ×
▼合わせて読みたい
- 暖冬予報でもドカ雪に注意!誰でも車立ち往生に巻き込まれる恐れ… 引き金になる「スタック」はなぜ起こる?
- [大雪立ち往生、再発どう防ぐ?]国道8号・8号バイパス(新潟柏崎市)編
- [大雪立ち往生、どう防ぐ?]国道8号・17号(新潟見附市-長岡市-小千谷市)編
▼新潟県内各地の天気予報・気象情報
▼交通ニュース






















