週刊文春を発行する文芸春秋=東京都千代田区紀尾井町

 政治家や芸能人のスキャンダルを次々と報じ、注目を集める週刊誌「週刊文春」。放たれたスクープのインパクトは「文春砲」と呼ばれ、2016年には「ユーキャン新語・流行語大賞」にノミネートされるなど、スクープの代名詞として世の中に浸透しました。

 毎週のように驚きを提供する週刊文春の記者の「日常」とは、どのようなものなのでしょう。週刊文春を発行する文芸春秋(東京都千代田区紀尾井町)を訪ねました。話を聞いたのは週刊文春の記者、本山裕記さん(45)です。

◆スクープを追う週刊文春の記者の1週間とは?

 週刊文春の記者の1週間は、木曜日から始まります。翌週に発売する号の記事のラインアップを決める「プラン会議」が午前に行われます。「これがきついんです」と本山さん。会議には、記者1人につき5本の「ネタ」を用意することが義務付けられているためです。「理想は、どこも報じていない独自ネタを5本そろえることですが、そんな人はまずいないです。ネタがないときは本当にないんですよ」

 ラインアップが決まると、各記者に午後4時ごろ、記事の「発注」が来て、取材がスタートします。週刊文春編集部では、ネタを取ってきて記事を執筆する人は「カキ」、取材のサポートをする人は「アシ」(語源は「足」や「アシスタント」など諸説あり)と呼ばれます。「カキ」と「アシ」が連携し、月曜夜まで取材に走り回り、記事を書き上げ、火曜朝にはデスク(取材、記事などの責任者)に提出します。

 校了(校正作業の終了)を経て、休日の水曜日をはさみ、木曜の発売日を迎えます。木曜にはプラン会議があり、また新しい1週間が始まります。

 大きいネタを追っている際、プラン会議は免除されますが「1週間ずっと張り込みをすることもありますし、ひたすら『ブツ読み』(資料の精査・分析)していることもあります」と気が抜けない時間が続きます。

 ハードなスケジュールの中でも、本山さんは火曜と木曜に「ネタ元との会食」を欠かしません。「これが重要で、火曜の夜に会食してネタが出てくれば、木曜日のプラン会議に出せる。もちろん、ネタをもらうためだけじゃないですよ」と本山さんにとって息抜きを含め、大切な機会になっています。

 水曜には「早刷り(発売前の誌面)を見た同業他社からの対応」があります。「昼くらいにマスコミ関係者に早刷りが出回ると『この記事の担当は誰?』とか『告発者の名前を教えて』とか、いろいろな問い合わせがあります。それに対応して一日が終わりますね」

 いつ休んでいるのだろうと疑問も湧いてきますが、「何もない平和の日もあるじゃないですか。暇なときは暇ですよ」と本山さんは笑います。それでも「東京で何か事件があったら動いていそうな人に連絡しちゃいます。『どうですか、(大事件に)発展しそうですか』とか。鈍りたくないので」。結局、仕事が頭から離れないそうです。

◆本山記者が愛用する「秘密道具」とは?

 取材現場で使う...

残り3156文字(全文:4331文字)