原田浩二准教授
原田浩二准教授

 全国の河川や水道水などから発がん性が懸念される有機フッ素化合物(PFAS有機フッ素化合物のうち、ペルフルオロアルキル化合物とポリフルオロアルキル化合物を総称したもの。1万種類以上あるとされる。(※ページ下部に詳細))が検出されている。PFASについて長年研究している京都大大学院医学研究科の原田浩二准教授(45)=環境衛生学=に、健康への影響や、海外と比較した国の暫定目標値の妥当性などについて聞いた。

-PFASはどのような性質がありますか。

 「PFASは分解しにくくて、人体にたまりやすく、環境中にも残りやすい。1940年代後半から製造使用されてきたので、世界中に広がっている。水道水への影響だけでなく、海や川などから魚に蓄積して、人間がその魚を食べるというサイクルになっている。多い少ないはあるが、PFASを全く取り入れていない人はいない」

-健康にどのような影響がありますか。

 「現在の摂取量で、急性の影響が出るわけではないが、少しずつ広く多くの人に影響が出るのが問題だ。身体への影響について、国は確定的な知見はないとしているが、コレステロール値が上がる脂質異常症や、生まれてくる子どもの体重の低下傾向や免疫力への影響、甲状腺の病気などのリスクが上昇することが、疫学調査などで指摘されている。一部のがんが増えるかもしれないとも言われている」

-PFASの代表物質であるPFOA、PFOSの輸入製造は現在、原則禁止されています。

 「放出、廃棄された物質が地下などに残っているとされ、各地の工場近くの川や地下水などからPFASが見つかっている。これまで家庭で使っていた生活用品がまだ残っている場合もある。PFASの種類は多く、撥水(はっすい)加工のスプレーなどで似たような性質を持つ物質は使われている。規制の対象の幅を広げていくことも考えていかなくてはならない」

-米国はPFOAとPFOSの飲料水の規制値をそれぞれ1リットル当たり4ナノグラムと設定している。日本は2種類合計で同50ナノグラムで、努力義務にとどまる暫定目標値から法的な義務を伴う水道法上の「水質基準」の対象にする方針は決まったものの、相対的に高いと言われています。

 「厳しい値の米国だが、...

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