第107回全国高校野球選手権新潟大会は24日、ハードオフ・エコスタジアムで準決勝を行った。春を制した第1シードの中越と昨夏王者でノーシードの新潟産大付がそれぞれ勝ち上がり、決勝に駒を進めた。
中越は、石山愛輝が先発雨木天空を救援して好投し、関根学園との接戦を3-2で制した。決勝進出は2年ぶり。
新潟産大付は昨夏の決勝の相手、帝京長岡に先制されたが、七回に一挙5得点を挙げ逆転。8-6で下した。
決勝は26日午前10時、エコスタで行う。
◆新潟産大付の主将・仙海駿 打線に勢いもたらすタイムリー
「自分の失策をばん回するチャンスを野球の神様がくれた」。新潟産大付の主将、仙海駿はそんな思いで七回の打席に入り、同点適時打を放った。勢いに乗ったチームは逆転。勝利をたぐり寄せた。

序盤に仙海の失策なども絡んで先制を許した。今大会を一人で投げ続けている主戦小平乃希は、この日も力投。打線もけん引し、適時二塁打などで点差を縮めた。
3-5で迎えた七回2死満塁で仙海に打席が回った。「小平を勝たせたい」と高めの変化球を捉えた打球はセンター前へ。その後、小平が勝ち越しの適時打を放ち、仙海らが生還。この回の集中打が試合の流れを変えた。
3番を担いながら、4回戦と準々決勝は無安打。「何か変えないと」と短期間で打撃フォームなどを一から見直した。コンパクトに当てることを意識し、その成果が表れた。
昨夏の甲子園出場メンバーの一人だ。「もう一度あの場所に戻る。そのために目の前のワンプレー、一球に全力を尽くす」。聖地へあと一歩まで来た。
(運動部・村山穂波)
◆帝京長岡主将・山野陽が悔い「1年生投手をカバーできなかった」
帝京長岡は三回に敵失も絡んで3点を先制。六回には救援した今井大瑚の左中間ソロも飛び出すなど中盤まで優位に試合を進めたが、ひっくり返された。先制二塁打を放った捕手の有馬凛空は「点を取った後の甘さが最後に出てしまった」と肩を落とした。

大会直前にエースが登録メンバーから外れる不測の事態もあったが、これまで5人が投げてチームをもり立てた。この日も1年生2人を含め4人が登板。主将の山野陽は「1年生投手をカバーしてやらなければいけなかったが、できなかった」と悔しがった。
昨夏、ノーシードから勝ち上がってきた新潟産大付に決勝で敗れた。有馬、山野は昨夏の決勝の先発メンバーでもあった。
「絶対につなごう」。逆転され3点を追う九回裏、打席に立った井野元爽生は左翼線への適時打で1点を返し、意地を見せた。甲子園に行くことだけ考えて過ごした高校生活に「悔いはない」。晴れやかに言い切った。
◆中越、右のエース石山愛輝が好救援 自己最速148キロ
中越の「右のエース」が戻ってきた。四回から登板した石山愛輝は、球威抜群の直球と切れのあるスライダーで、爆発力が売りの関根学園打線を沈黙させた。春に苦しんだ制球の乱れを克服しての復活。「不調だったとき、周りが助けてくれた。恩返しが少しできた」と喜んだ。

エースナンバーを背負った昨秋の大会後、調子を崩した。負けん気の強さからか、上体に力みが生まれ、下半身とうまく動きがつながらなくなった。今春の北信越大会の富山第一戦では自責点6。「どん底まで落ちた感じだった」と振り返る。
焦りもあったが、チームの仲間や指導者らに「夏まで時間がある」と励まされ、投球法を一から学び直した。フォームへの理解が深まり、「秋を超える投球ができるようになった」と胸を張る。
この日の球速は自己最高の148キロを計測。「自分でも驚いた」という。エコスタは秋の県大会決勝で敗れ、春の北信越大会では絶不調だった舞台。「嫌な思い出しかなかったが、ゼロで抑えて断ち切れたかな」と笑顔を見せた。
(運動部・山田悠)
◆関根学園のエース鈴木興丞、熱投175球「リベンジできず悔しい」
疲労や体の痛みがある中、175球を投げ切った。関根学園のエース鈴木興丞は、今春の県大会準決勝に続き中越に敗退。「リベンジできず、主将としてもチームを勝たせられなかったことが悔しい」と唇をかんだ。

中越の4番窪田優智に苦しんだ。七回まで、4打席で3安打。インコースに強いと聞き、そこを避けたが打ち込まれた。最終回に再び窪田と対戦。「ここで勝負に出ないといけない」。逃げずにインコースを攻めて三振を奪うと、「シャー」と感情があふれた。
埼玉県出身。高校で初めて主将を務めた。新チーム結成の頃はうまくまとめられず悩んだが、仲間に助けられ、ここまでチームを引っ張ってきた。安川巧塁監督も「鈴木が人間的にも成長してくれた」とたたえる。
学校や地域の人にも支えられた。この日も大勢の応援が駆けつけ、「いつも以上の力が出せた。地元(の埼玉)ではできない経験、人に出会えた」と感謝を口にした。
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