京セラが液体水素用セラミックハーメチックシールの開発を加速

     

京セラ株式会社(代表取締役社長:谷本 秀夫、以下:京セラ)は、宇宙航空研究開発機構(以下:JAXA)との共同研究により、液体水素環境において耐久性と気密性を確保するとともに高電流に対応した100A対応の「電流導入端子」と、コネクタ全体で最大110Aまで対応するハーメチックシールコネクタ「MS-8ピン端子」の2製品を新たに開発しましたのでお知らせします。

2製品(以下、本製品)は、液体水素の貯蔵・運搬における汲み上げポンプや払い出し用ポンプ、さらに昇圧ポンプや発電機など、大電力の供給・取り出しが必要となる装置の電流導入用として使うことができます。 

京セラは、計測・制御用途向けの液体水素用ハーメチックシールコネクタ「MS-10ピン端子」をJAXAの協力のもと開発し、2024年3月に発表しました。本製品もJAXA能代ロケット実験場にて液体水素環境下での耐久性および気密性に関する実証試験を実施し、信頼性を確認しています。なお、液体水素環境で使用可能な高電流対応の電流導入端子およびハーメチックシールコネクタ「MS-8ピン端子」の開発は、世界で初めて※1となります。

※1. 液体水素用のハーメチックシールの開発において(2025年12月5日京セラ調べ)


 

 【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202512020170-O4-6v2xA7W0】  【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202512020170-O3-T9k5EjyV


左: 電流導入端子 (100A対応、サイズ:金具最外径Φ16mm×長さ94mm)

右: MS-8ピン端子 (最大110A対応、サイズ:金具最外径Φ41mm×長さ72.5mm)

 


■開発の背景
日本政府は2050年の日本のカーボンニュートラル実現に向け、2017年に「水素基本戦略」を策定し、2023年6月の改定では2040年までに年間1,200万トンの水素導入を目標としています。


 水素の運搬・貯蔵においては、気体の体積を1/800まで低減できる液体水素が有望視されています。しかし液体水素はマイナス253℃という極低温のため、タンクなど液体水素に直接接触する部品には、その過酷な環境に耐える高い耐久性と気密性が求められていました。

 

■京セラとJAXAによる液体水素対応の電流導入端子の共同開発


京セラは2016年より、JAXA小林弘明教授とともに液体水素用のセラミックハーメチックシール技術の共同研究を進めてきました。当社が長年蓄積してきた金属とセラミックスの複合技術による超高真空用気密端子の技術と、JAXAが有する液体水素に関する豊富な評価技術により、2024年には世界で初めて※1 液体水素による実証実験で信頼性を確認した計測・制御用途向けハーメチックシールコネクタ「MS-10ピン端子」を製品化しました。

その後、宇宙ロケットや産業用途において、より高電流を扱える電流導入端子への需要が高まったことから、このたび新たに高電流対応の電流導入端子およびハーメチックシールコネクタ「MS-8ピン端子」を開発しました。

■水素社会の実現に向けた取り組み
京セラと JAXA の小林弘明教授が共同開発した計測・制御用途向けの液体水素用ハーメチックシールコネクタ「MS-10ピン端子」は、2024年に高圧ガス保安協会に対する例示基準外申請に国内で初めて※2合格し、高圧ガス設備への使用適合が認められました。

製品に使用しているセラミックとFe-Ni-Co合金※3は、高圧ガス保安法に規定のない「例示基準外材料」です。そのため、京セラは液体水素に対する材料の基礎評価や製品での数々の実証試験を行い、独自の耐圧強度計算の要件を明確にすることにより、その安全性を立証しました。これにより、高圧ガス保安協会から公式な評価を得られました。

 

【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202512020170-O7-Gq4ek686


計測・制御用 「MS-10ピン端子」 (金具最外径Φ34mm×長さ72.5mm)


京セラは、世界に先駆けて開発が進む液体水素関連機器に使用可能な部品の研究開発を推進し、水素社会の実現に貢献してまいります。



※2  セラミック製液体水素用ハーメチックシールコネクタとして(2025年11月京セラ調べ)
※3  鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)を含有する合金のこと