株式会社新潮社
木内昇さん著『雪夢往来(せつむおうらい)』(新潮社刊)がこの1年でもっとも優れた散文作品に贈られる文学賞・大佛次郎賞を受賞。『雪夢往来』は中山義秀文学賞につづき2冠を達成しました。



小説、ノンフィクション、歴史記述など幅広い分野で活躍した作家・大佛次郎の業績を称え、形式を問わず優れた散文作品に贈られる文学賞・大佛次郎賞に木内昇さんの『雪夢往来』が選ばれました。
同賞の過去の受賞作は大江健三郎、司馬遼太郎、吉村昭、富岡多惠子、水村美苗、浅田次郎、高村薫といった錚々たる作家の骨太な作品ぞろい。そこに加わることになった木内さんの受賞は本日12月23日の朝日新聞朝刊紙上で発表されました。
また、この受賞により『雪夢往来』は第31回中山義秀文学賞に続き文学賞2冠を達成しました。木内さんは今年、『奇のくに風土記』(実業之日本社)で第53回泉鏡花文学賞を、『惣十郎浮世始末』(中央公論新社)で第19回舟橋聖一文学賞を受けるなど受賞ラッシュで、改めてその確かな筆力に評価と注目が集まっています。

■『雪夢往来』作品紹介

越後・塩沢の縮仲買商・鈴木牧之(すずきぼくし)は、行商に訪れた江戸で、越後の生活がまるで知られておらず、どころか人の背丈を超すほどの雪が降ると言って法螺吹き呼ばわりされたことをきっかけに、雪に閉ざされた越後の冬の暮らしや行事、奇譚などを、商売のかたわら綴り始める。やがて彼の書いた「雪話」は江戸の人気戯作者・山東京伝の目に留まり、出版へと動き始める。しかし版元からの金銭要求、度重なる仲介者の死去に見舞われ、事態は膠着。原稿は京伝への敵対意識に燃える滝沢馬琴の手に渡り、ついに全てが回り出すかに見えたが――江戸のベストセラー『北越雪譜』が刊行されるまでの40年にわたる風雪の日々と、虚々実々の江戸出版界を縦横に描ききる傑作長篇!

■木内昇さんによる受賞の言葉

『雪夢往来』は物書きの悲哀と苦難を、『北越雪譜』の著者である越後の鈴木牧之と、山東京伝・京山兄弟、滝沢馬琴ら江戸の戯作者たちの生涯を通して描こうと試みた小説です。素人と玄人、越後と江戸、書くことへの姿勢やスタンスは違っていても、物書きであるがゆえの苦しみはそれぞれにあるはず。彼らの自問自答する姿を物書きである私が書き、やはり書き手である選考委員の皆さまにそれを受け容れていただけたのだと大変嬉しく思っています。大佛次郎賞のこれまでの受賞者は、私自身が愛読してきた素晴らしい作家の方々ばかり。その末席に名を連ねることができるのは望外の喜びです。このたびの選考に関わってくださったすべての方にお礼申し上げます。


著者紹介:木内昇 きうち・のぼり

1967年生まれ。出版社勤務を経て独立し、インタビュー誌「Spotting」を創刊。編集者・ライターとして活躍する一方、2004年『新選組 幕末の青嵐』で小説家デビュー。2008年に刊行した『茗荷谷の猫』が話題となり、早稲田大学坪内逍遙大賞奨励賞を受賞。2011年に『漂砂のうたう』で直木賞を受賞。2013年に刊行した『櫛挽道守』は中央公論文芸賞、柴田錬三郎賞、親鸞賞を受賞。2025年『雪夢往来』で大佛次郎賞・中山義秀文学賞、『奇のくに風土記』で泉鏡花文学賞、『惣十郎浮世始末』で舟橋聖一文学賞を受賞。他の作品に『よこまち余話』『光炎の人』『球道恋々』『火影に咲く』『化物蠟燭』『万波を翔る』『占』『剛心』『かたばみ』など多数。





■書籍データ

【タイトル】雪夢往来
【著者名】木内昇
【造本】四六判ソフトカバー
【発売日】2024年12月16日
【定価】2,200円(税込)
【ISBN】978-4-10-350957-8
【URL】https://www.shinchosha.co.jp/book/350957/
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