佐渡汽船新潟港ターミナルから佐渡に向かう乗客。運賃値上げで、観光への影響が懸念される=23日、新潟市中央区
佐渡汽船新潟港ターミナルから佐渡に向かう乗客。運賃値上げで、観光への影響が懸念される=23日、新潟市中央区

 佐渡汽船が約30年ぶりとなる運賃改定を国に申請した。観光・帰省などの島外からの一般客は値上げとなる。世界遺産登録から続く観光客増に向けた流れに水を差さないか、観光関係者からは懸念の声が上がる。一方、島民運賃は最大4割の実質値下げとなる。本土を往来する唯一の交通手段だけに、島民からは安堵(あんど)の声も聞かれた。

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 「毎月佐渡に帰省しているので、値上げは正直困る」-。両津港ターミナルで新潟市へ戻るところだった女性(83)は嘆いた。一方で「最近はいろいろな物が値上げしており、仕方ないという思いもある」と口にした。

 「佐渡島(さど)の金山」が2024年7月に世界遺産に登録されてから、観光客の増加ペースが続く。今年の観光目的の入り込み客は10月末までで28万7510人と、前年同期を約3万人上回っている。そのさなか示された佐渡汽船の値上げ方針。島内の旅行業者でバスガイドをしている40代女性は「佐渡へ来る手段は船しかない。値上げが観光客の足止めにならないことを願う」と不安そうに語った。

 島内約20の宿泊施設でつくる佐渡観光旅館連盟の本間東三夫(とみお)会長(61)は「物価高の中で、一定の値上げは致し方ない」と理解を示す。「交通事業者も含め、オール佐渡で接客の充実を心がけていきたい」とした。

 運賃値上げは輸送コスト増にもつながる。県内の大手運輸業者の担当者は「トラックの輸送運賃が上がれば、その分を顧客に転嫁せざるを得なくなる」と説明する。別の企業の役員も「企業努力のしようがない。顧客に(値上げ分を)のんでもらう以外にない」と強調した。

 一方で運賃が下がる島民も、思いは複雑だ。佐渡市の介護職員(41)は「最近は週に1、2回新潟を訪れているので、島民が安くなるのはうれしい。ただ、観光客が今回の値上げで二の足を踏むような形にならなければいいが」と...

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