12時間に及ぶ激戦となった第50期棋王戦第3局。藤井聡太棋王(左)と増田康宏八段が持てる力を尽くした=2025年3月2日、新潟市中央区の新潟グランドホテル
12時間に及ぶ激戦となった第50期棋王戦第3局。藤井聡太棋王(左)と増田康宏八段が持てる力を尽くした=2025年3月2日、新潟市中央区の新潟グランドホテル

 屈指の好カードが、また新潟にやってきた。将棋の第51期棋王戦5番勝負は、六冠を保持し、4連覇を狙う藤井聡太棋王(23)と、一流の証しであるA級棋士の増田康宏八段(28)の第3局が3月1日、新潟市内で指される。同じ顔合わせだった昨年の新潟対局は千日手となり「指し直し」を含め、12時間近くの激戦となった。今年はここまで1勝1敗のタイ。初タイトルを目指す増田八段が棋王を相手に、どんな戦いを展開するのかが見どころの一つだ。

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 将棋のタイトル戦で2年連続同じ顔合わせになるのは多くない。半世紀の歴史のある棋王戦でも過去4度だけだ。負けた方が次期タイトル戦の挑戦者となるには、トーナメント戦を勝ち抜かなければならない。今回の増田八段の場合、トーナメントで5連勝して、藤井棋王へのリターンマッチを決めた。

 増田八段は2025年3月に新潟市で指された第50期棋王戦第3局の前日、新潟日報社のインタビューにこう語っていた。

第50期棋王戦第3局で二手目を指す増田康宏八段=2025年3月2日、新潟市中央区の新潟グランドホテル

 「タイトルは子どもの頃からの夢なので取りたいなとは思うんですけど、2連敗で追い込まれてしまったので、まずは一勝」

 そんな思いを抱いて臨んだ昨年の新潟対局は、棋王戦として27年ぶりとなる「指し直し」となった。指し直しというのは、同じ手順が続いて膠着(こうちゃく)状態となり、もう一度最初から対局すること。先手と後手が入れ替わり、有利とされる先手を持って指し直し局に挑んだ増田八段だったが、藤井棋王に屈し、3連覇を許した。

 局後、増田八段はインタビューにこう漏らした。

 「(第50期のシリーズを通して)中終盤の辺りの攻め合いで、ちょっといい局面でも良くすることができなかった。力不足だった」

 あれから1年がたつ。今シリーズでは開幕局で藤井棋王に勝利し、タイトル戦で初白星を挙げた。藤井棋王を下したのも、2018年6月の竜王戦決勝トーナメント以来と、久々だった。今シリーズの第2局は敗れたものの、昨年とは違って新潟対局をタイの状況で臨む。

千日手となった第50期棋王戦第3局で初手を指す藤井聡太棋王=2025年3月2日、新潟市中央区の新潟グランドホテル

 将棋界に名を刻む大山康晴15世名人(タイトル80期)、中原誠16世名人(同64期)、羽生善治九段(同99期)は多くのタイトルを制し、圧倒的な存在感を放ってきた。23歳にしてタイトル32期の藤井棋王もその系譜に続く存在だ。

 若き王者に臨む増田八段がどう戦うのか。今回の新潟対局で立会人を務める藤井猛九段が勝負に臨む心境について語ってくれたことを思い出す。「まず1回勝たないといけない。1回勝てば全然気持ちが違ってくる。経験者から言わせてもらうと」。羽生九段らと渡り合い、竜王3期の実績を残した藤井九段らしい実感がこもっていた。

 増田八段はこのシリーズまで対藤井聡太戦で、昨年の棋王戦を含め9連敗を喫していた。その流れは今年2月に止めている。去年と違う気持ちで勝負に臨めていることだろう。ただ、もちろん相手は藤井棋王。タイトル奪取は簡単ではない。

 いずれが勝ってもタイトルに王手がかかる新潟対局。岐路の一局となる。