カフェのようなサイダットルームで、定例ミーティングをするスタッフ=上越市のさいがた医療センター
カフェのようなサイダットルームで、定例ミーティングをするスタッフ=上越市のさいがた医療センター

【2021/07/30】

 「薬物依存症の人なんて、自分とはかけ離れた人たちだと思っていた」。ギャンブル依存症で、さいがた医療センター(上越市)に入院中の50代男性は、抱えていた偏見を打ち明ける。依存症の中でも、特に薬物依存症者は、偏見や誤解をもたれがちだ。

 だが、同センターで行う薬物依存症者らが入居する民間リハビリ施設「新潟ダルク」との交流で、男性は「自分と根っこは同じ」と気付いた。親がアルコール依存症だったことなど彼らの境遇を聞いているうちに涙が止まらなくなった。

 男性も小さい頃、アルコール依存症で暴れる父が怖くて、布団の中で時が過ぎるのを待ち続けた。声を出して泣くこともできず、自分の本心を押し殺して生きてきた。大人になるとスロットで浪費し、飲酒でさみしさを癒やしてきた。

 同センターでは、依存症の種類に関係なく一緒に受ける治療プログラムもある。初めて同じ境遇の仲間に会い、さみしさ、恐ろしかった思いをはき出せた。「小さい頃からの『生きづらさ』が依存の原因だとやっと分かった。気持ちが楽になった」

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 同センターは、アルコールやギャンブル、薬物などあらゆる依存症の患者を治療する。入院直後や退院間近、通院中など回復の段階もさまざまで、プログラム「変化のステージミーティング」では、彼らが一緒に近況を報告し合う。

 進行役の心理療法士、野村照幸さん(42)は「種類に関係なく依存症になる背景には、全てではないものの、自己肯定感が低く、安心感を得にくい家庭環境であったことなど似た体験を持つケースが多い」と指摘。患者自身がさまざまな体験を共有することで、変わりたい気持ちを自然と持つ狙いがある。

 プログラムでは、「入院したばかりで気持ちがめいっている」「起床時がしんどい」など、患者が率直な気持ちを打ち明け、参加者全員が拍手で感謝する。

 5年ほど前に退院し、現在も通院するアルコール依存症の60代男性は、近所付き合いや趣味の仲間を作ることの大切さを話した。毎週このプログラムに通い続けることで病気と向き合う。「自分は気持ちが弱い。他の人の話を聞き、依存症を忘れないようにしたい」

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 患者が体験を共有する治療プログラムは、リラックスして仲間と語り合えるよう、カフェのような「サイダットルーム」で行う。カウンターに木目調の丸テーブル、ソファに暖色系の照明…。黒板にはチョークでフラミンゴやヤシの木が描かれている。

 アイデアを出したのは、佐久間寛之(ひろし)副院長。以前勤めていた、依存症の先進的治療を行う久里浜医療センター(神奈川県)で、太平洋が目の前に広がるゆったりした環境がヒントになった。

 従来の病院によくある蛍光灯、長テーブル、パイプいすという無機質な空間では、「心の悩みを話すのは勇気がいるのに、打ち解けられるわけがない」と佐久間副院長。作業療法士を中心としたスタッフが温かみのある空間を作り上げた。

 週1回行うスタッフミーティングも、サイダットルームで行い、自由に意見を言い合える雰囲気づくりを心掛けている。「中庭の菜園に大きな日よけを設置しよう」「ゲーム・ネット依存の子どもたちが憧れるプロゲーマーを呼んでみよう」といったアイデアが生まれる。

 「自由な発想、楽しく、のびのび、ユーモア」をモットーに、スタッフの挑戦は続く。