朝、3LDKの自宅を出てバスを乗り継ぎ出勤し、夕方、再びバスに揺られて家路につく。

 筆者の日常の一端を切り取れば、そこに浮かび上がるのは、どこにでもいるありふれた会社員である。

 ただ一つ、「ステージ4」のすい臓がんを患い、2週間に一度、抗がん剤による化学療法を受けていることを除いては...。

職場で原稿を書く筆者。1週間勤めては1週間休む変則勤務を会社に認めてもらい、働きながらがん治療を続けている=新潟市中央区の新潟日報社

 「きょうも生き延びられた」

 就寝前や起床の折に、ふとそんな感慨を抱くようになってもう半年になる。

 入社30年。酒と散歩とロックが好きな中年記者である筆者 が、がんを告知されたのは昨年7月27日、腹痛と倦怠(けんたい)感から会社を早退して足を運んだ、自宅近くの病院でのことだった。

 青天の霹靂(へきれき)だ...

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