働き続けたい-。それは職務に対する責任や使命感というよりは、必要に迫られた切実な願いだった。
この命がいつまで続くのか分からない。ただ、生きている間は治療を受ける必要があり、治療にはお金がかかる。そのための収入は確保しなければならず、仕事を辞めるわけにはいかない。がん告知の衝撃から立ち直って、真っ先に考えたのがそのことだった。
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治療にいくらかかっているのか、ざっと計算してみた。大半を占めるのが2週間おきに受けている化学療法で1回約4万円。そこに内服薬やその処方料、6週間に一度のコンピューター断層撮影(CT)検査料などを含めて、ひと月平均約11万円を支払っている。収入の関係で国の...
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