市総合体育館で行われた柏崎市長選の開票作業=11月17日、柏崎市半田
市総合体育館で行われた柏崎市長選の開票作業=11月17日、柏崎市半田

 11月17日投開票の新潟県の柏崎市長選は、無所属現職の桜井雅浩さん(62)が、共に無所属新人で自営業の阿部由美子さん(62)、燕市在住の会社員の野本祐二さん(58)を破り、3選を果たした。新潟日報社が実施した出口アンケートでは、東京電力柏崎刈羽原発新潟県の柏崎市、刈羽村にある原子力発電所で、東京電力が運営する。1号機から7号機まで七つの原子炉がある。最も古い1号機は、1985年に営業運転を始めた。総出力は世界最大級の約821万キロワット。発電された電気は関東方面に送られる。2012年3月に6号機が停止してから、全ての原子炉の停止状態が続いている。東電が原発を再稼働させるには、原子力規制委員会の審査を通る必要がある。7号機は2020年に全ての審査に「合格」したが、安全対策を施している最中で、再稼働していない。再稼働東京電力福島第1原発事故を踏まえ、国は原発の新規制基準をつくり、原子力規制委員会が原発の重大事故対策などを審査する。基準に適合していれば合格証に当たる審査書を決定し、再稼働の条件が整う。法律上の根拠はないが、地元の自治体の同意も再稼働に必要とされる。新潟県、柏崎市、刈羽村は県と立地2市村が「同意」する地元の範囲だとしている。に賛成するとの回答が反対を上回り、2020年の前回選より、賛成の割合がわずかに増える結果となった。

 出口アンケートは6投票所で有権者224人に対して実施した。「賛成」は21・4%、「どちらかといえば賛成」は28・1%で、計49・5%と半数近くに上った。「反対」は14・7%、「どちらかといえば反対」は20・1%で計34・8%。「どちらともいえない」は15・6%だった。

 20年の出口アンケート(8投票所、300人回答)との比較では、「どちらかといえば」とした人を含めて「賛成」が2・2ポイント増え、「反対」が4・4ポイント減った。

 再稼働に賛成する有権者では、地球温暖化対策や電力需給を理由に挙げる人が多かった。ただ、「(原発事故と一緒に)地震があった時の避難は確立されていない。段階を追って廃炉にしてほしい」(中央地区40代女性)と慎重な声もあった。反対する人からは、原発事故時の避難や、原発の高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分などへの懸念が上がった。

 一方、柏崎市が抱える課題は、原発再稼働問題の他にも、JA県厚生連柏崎総合医療センターの在り方や急速に進む人口減少への対応など多岐にわたる。

 新しい市長に最も優先して取り組んでほしいこと(複数回答)は「医療・福祉・介護」が131人でトップになり、「地域活性化」が85人、「原発・エネルギー」が69人で続いた。原発再稼働問題以外を重視した人も多く、桜井さんに投票した人が最も優先して取り組んでほしいことに挙げたのは、「医療・福祉・介護」が33・5%、「地域活性化」が21・8%、「原発・エネルギー」は14・8%だった。

 桜井さんに投票した西山地区の70代女性は「今までの実績を見て投票した。(桜井さん以外の)2人は原発以外の訴えがなく、その他の問題は果たしてどうするかと思った」と語った。

◆桜井雅浩さん、再稼働「反対」票も取り込む

 新潟日報社が実施した出口アンケートでは、東京電力柏崎刈羽原発の再稼働を条件付きで容認する桜井雅浩さんが、再稼働に否定的な層からも一定の票を集めたことがうかがえた。有権者はどんな思いを込めて1票を投じたのか。胸の内を探った。

 「特に理由はないが、他の候補が比較にならない」。北条地区の70代女性は、再稼働に「どちらかといえば反対」と答えたが、再稼働を認める桜井さんに投票した。

 市長選で、桜井さんは2万7587票を獲得。再稼働に反対した次点の阿部由美子さんに2万票超の大差を付けた。要因の一つには、桜井さんが再稼働に肯定的な人の支持を固めた上で、否定的な人からも一定の票を得たことがある。

 桜井さんは...

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