所得税や社会保険料の負担が発生する「年収の壁パートの従業員らは収入が一定の金額になると税金や社会保険料の負担が生じる。手取りの減少を意識して働く時間を抑えてしまい、人手不足の一因となっており「壁」に例えられている。「103万円の壁」のほか、社会保険料の負担が発生する「106万円の壁」もあり、政府は2023年10月、保険料分を肩代わりした企業に補助金を支給する対策を導入した。」見直しの議論が進んでいる。新潟県内でもパートやアルバイト従業員を多く雇用し、人手不足になりやすい飲食業や小売業などが動向を注視している。特に厚生年金加入にかかわる「106万円の壁」を巡っては、賃金や企業規模の要件が撤廃されると保険料負担が発生し、手取りが減る労働者が出るほか、企業の負担も増す。雇用側からは「労働力の確保につながらない」と懸念の声も上がっている。

 短時間労働者は、年収に応じて税や社会保険料の負担が生じる=図参照=。厚生年金は現在、月額賃金8万8千円(年収106万円)以上など四つの要件を全て満たすと、短時間労働者も加入する。

 厚生労働省はこの賃金要件と、企業規模要件(従業員51人以上)を撤廃する案を社会保障審議会の部会に提示。これが実現すると、労働時間が週20時間以上の人は、年収を問わず厚生年金に加入することになる。

 県内で複数のイタリア料理店などを経営する新潟市北区の男性(52)は「『106万円の壁』がなくなれば、働き控えはむしろ確実に起こる。人手不足に拍車がかかる」と心配する。

新潟市中央区にある飲食店の調理場。パート従業員として働く人たちも多い

 男性の店は、現行制度では企業規模要件に当てはまらず、女性パート従業員の中には、配偶者の扶養範囲(年収130万円未満)の上限近くまで、就業時間を調整しながら働く人もいる。だが、「壁」の撤廃で社会保険料の負担が生じると、手取り収入の減少を避けようと、労働時間をさらに短くする人が出ると、男性はみている。

 「現在の人員のままでは店舗運営が困難になり、新たに人を採用しなければならないが、難しい。営業日数を減らす対応も必要になるだろう」と頭を悩ませる。

 雇用する側への影響を懸念する声もある。小売業の70代男性経営者は...

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