【2021/02/24】
「周囲に何度もうそをつき、ギャンブルを続けていた」「パチンコの新台入れ替えのCMを見ると、行きたくなってしまう」-。一人がぽつりぽつりと語り始めると、周囲の人たちは目をつぶり、ただうなずく。助言や意見は一切言わず、「言いっ放し、聞きっ放し」がルールだ。
新潟県内各地の集会所などで定期的に開かれている、ギャンブル依存症自助グループのミーティング。依存症に悩む人たちが自身の経験を語り合い、共に回復を目指す。他の人の話に自分の経験を重ね合わせることで、自身を客観的に振り返ることができるようになり、回復につながるという。
高校時代からパチンコ依存に悩んでいる20代の内田奈央さん=仮名=も、地元の社会福祉協議会のスタッフに勧められて、昨年11月からミーティングに参加し始めた。
初めは「本当に話し合いだけで依存症が解決するのか」と懐疑的だったが、今は同じ悩みを持つ人たちが頑張る姿を見て、自分も頑張ろうと思えるようになった。
自分のつらい体験を、包み隠さずはき出すことができた。共感もしてもらえた。自助グループに加わってから、パチンコはやらずに過ごせている。
会の中心は、長年ギャンブルをやめ続けることができているメンバーだ。「先輩たちの姿が自分の目標になり、未来に希望が持てるようになった」
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自助グループに参加しギャンブル依存から抜け出せた人がいる一方、途中で姿を見せなくなったメンバーもいる。参加して8年になる村上市の50代男性は「1、2回で来なくなる人の方が圧倒的に多い」と打ち明ける。「自助グループは通い続けないと効果が出ない。途中でやめる人は、依存症が自分の力だけでは治せないことに、まだ気付いていないのだろう」と話す。
複数のグループに参加している県内の20代男性は「会場によって雰囲気が違うので、一つだけ参加して、自分に合わないと決めてしまうのはもったいない」と訴える。
専門家も回復には継続性が重要だと指摘する。依存症の治療に当たる「さいがた医療センター」(上越市)の佐久間寛之副院長は「依存症は治療の継続が何よりも大切。もし自助グループが合わなければ、通院や相談だけでも続けてほしい」と呼び掛ける。
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自助グループに救われた内田さんは、女性の参加者が少ないと感じている。通っていたパチンコ店には3割ほど女性客がいたのに…。
自分も女性がギャンブルにはまるのは印象が悪いと考え、周囲に打ち明けづらかった。だから、男性が多い自助グループに参加しにくいという女性の気持ちが理解できる。
しかし、依存症は1人で悩んでいても何も解決しない。「自分も自助グループの仲間たちと出会えなければ、今もパチンコを続けていたかもしれない」
最近は、新型コロナウイルスの影響で、オンライン参加を受け入れるグループもあり、参加しやすくなっている。「受け止めてくれる場所はどこかに必ずある」。誰にも相談できず悩んでいる人に、そう伝えたい。
=おわり=
(この連載は報道部・五十嵐南美、高橋哲朗が担当しました)