【2021/02/18】

 借金問題の相談に訪れた人にかつての自分を重ね合わせる。新潟市中央区で法務事務所を経営する司法書士の砂原恵一さん(51)は、ギャンブルから抜け出せず多重債務を抱えた過去を持つ。

 「返済に追われ貸金業者からの督促におびえる日々、家族にばれるのではないかという恐怖心…本当につらい毎日でした」。ホームページでは、自身の体験を明かしている。

 自分ができたのだから、他の人も立ち直れるはず-。これまでの経験から「多重債務を抱えても、人生はいくらでもやり直せる」と考える。

 借金に追い込まれた人の多くは「人生終わりだ」と自暴自棄になり、家族も「破産したら家も車も失ってしまう」と借金を肩代わりし続けているケースが少なくない。しかし、債務整理は自己破産だけでなく、さまざまな方法があり、財産を守りながら生活再建することも可能だということを伝えている。

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 自分がやり直せたのは、一人の司法書士と出会えたからだった。

 新潟市の実家に住みながら弁護士を目指し勉強していた20代の頃、一度大きく当たったことをきっかけにパチンコにはまった。

 金が足りなくなり、消費者金融の無人機に入ると、簡単な審査ですぐに借りられた。少しの借金があっという間に膨らんだ。返済期限に間に合わず、他社から借り入れて返済するサイクルに。計6社、約360万円の借金を抱えた時点でローンの上限に達し、「どうすればいいか分からなくなった」。

 絶望的な気持ちで、何人かの法律家にメールで相談すると、長岡市の司法書士、外山敦之さん(53)だけが返信をくれた。外山さんから紹介された新潟市の司法書士に解決策を示してもらい、「気が楽になった」。

 債権者と和解し、元本のみを長期の分割で払うことになった。パチンコはやめきれなかったが、頻度を減らし、アルバイトを掛け持ちして、5年で完済した。

 「かつての自分と同じように多重債務に悩む人を救いたい」と司法書士になろうと決意。資格取得後は、手を差し伸べてくれた外山さんの事務所で働いた。

 外山さんからは、相談者と信頼関係を築くこと、家族状況などをしっかり聞き取り、その人に合った解決策や返済方法を探っていく大切さを学んだ。

 借金の相談窓口は、ギャンブル依存症だと自覚していない人を見つけることができる貴重な場だ。しかし、依存症への専門知識のない弁護士や司法書士が、借金したことを叱るなどの誤った対応をし、事態を悪化させてしまうケースもある。「依存症に対し、まずは多くの法律家が正しい知識を身につけるべきだ」と感じた。

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 2年間、外山さんの下で働いた後、債務整理を主に手掛ける事務所を開業した。パチンコはやめることができた。

 「相談して良かったです」。ギャンブルで借金を重ねた相談者が、ほっとした表情を浮かべた。かつて、不安な気持ちで相談した自分もそうだった。「同じ経験がある砂原さんだから安心して話せた」と打ち明けてくれる人もいる。

 多重債務者だった自分だからこそできる支援がある。「相談者に寄り添い、共に頑張っていく司法書士でありたい」