
新潟日報「おとなプラス」で連載した小説「葡萄(ぶどう)色の夢を追いかけて 川上善兵衛ものがたり」が書籍化され、善兵衛の生誕日である3月10日に発売される。善兵衛は「日本のワインブドウの父」と称され、岩の原葡萄園(上越市北方)を築いた。執筆した岩の原葡萄園業務部課長の渡辺真守(まさもり)さん(46)は「善兵衛のチャレンジ精神を多くの人に知ってほしい」と期待している。
連載は2021年11月から24年2月まで計136回にわたって、おとなプラスに掲載された。善兵衛の波瀾(はらん)万丈な生涯を次女・トシの視点から描いた。
善兵衛は1868(慶応4)年3月10日に北方で生まれ、90(明治23)年に岩の原葡萄園を開いた。ブドウ栽培とワイン醸造をゼロから始め、失敗と借財を繰り返しながらも、日本を代表するワイン用ブドウ「マスカット・べーリーA」を開発した。
渡辺さんが善兵衛の魅力を知ったのは、上越市役所職員時代に生誕150年事業に関わったときだ。市職員として、善兵衛の生涯を調べるうちに「自分が決めたことに突き進む情熱がすごい。チャレンジ精神に引かれた」と振り返る。
その後に縁があり、岩の原葡萄園に入社。岩の原葡萄園の創業130年事業として、善兵衛の生涯を冊子にまとめた。新聞小説執筆の機会が巡ってきたのはその直後。普段は業務部課長として経理や総務などを担当していることから指名に驚いたが、「善兵衛もチャレンジの人生。自分も挑戦しよう」と執筆した。

渡辺さんは「本を通して、ワインに親しむ機会にもしたい」と話す。岩の原葡萄園は出版記念として、岩の原ワイン「善」を購入すると景品が当たるキャンペーンを5月11日まで行う。
新聞小説の執筆当初からの夢がNHK「朝ドラ」の題材になること。渡辺さんは「書籍化は大きな一歩。善兵衛役は草彅剛さん、トシ役は綾瀬はるかさんがぴったりだと思う」と夢を膨らませている。
新潟日報社刊。四六判...