
上越市の中川幹太市長が公務の場で兵庫県三田(さんだ)市のコメを「まずい」と発言した問題で、中川市長は9日、市役所で記者会見を開き「多大なるご迷惑をかけ、心から深くおわびする。発言は撤回したい」と謝罪した。8日に三田市の田村克也市長に謝罪状を送ったことを明らかにし、直接謝罪に赴く意向を示した。
中川市長は1日の公務で三田市が酒米の産地であることに触れ、「食べるコメはまずい。でも酒米は本当にいい」と述べた。3日にも同様の発言をした。
三田市の田村市長から7日に「三田米の価値を不当におとしめる」と抗議状が届き、公式の場での謝罪を求められていた。
会見で中川市長は「三田で過ごした中学、高校時代に食べたコメについて言った。産地は分からない」として、三田産米を指しているわけではないと釈明。一連の発言に至った理由を「上越のコメがおいしいと伝えたかった」と話した。
田村市長には9日に電話で謝罪し、「(三田米の)信頼回復に努力を」と伝えられたという。今後「直接お会いして謝罪したい」とも述べた。
立候補を表明している上越市長選(10月19日告示、26日投開票)や進退に関しては「三田市、三田市民、農業関係者に謝罪することが最優先で、私のことには思いが至っていない」と述べるにとどめた。
中川市長は就任後失言を重ね、高卒者に対する不適切発言などを理由に、昨年7月に市議会から辞職勧告を決議された。わずか1年で再び問題発言をしたことについては「相手に対する配慮が足りなかった。もう少し謙虚になって取り組まなければならない」と述べた。
上越市には、9日正午までに市内外から電話やメールで93件の苦情が寄せられているという。
◆市議「首長の器ではない」
上越市の中川幹太市長が公務の場で兵庫県三田市のコメを「まずい」と発言した問題を受け、市議会からは、立候補を表明した市長選を控える中での発言に「資格はあるのか」などと厳しい声が上がった。昨年6月の高卒者に対する不適切発言で辞職勧告を決議したが、さらに失言を繰り返したとして「不信任決議案を検討する」との声も出ている。
渡辺隆議長は昨年6月の不適切発言を受け、抗議文書を市長に手渡した。「三田市や生産者に大変申し訳ない」として、今回の問題でも「週明けにも抗議文書を出す」と厳しい表情で語った。
中川市長が会見した9日、渡辺議長は中川市長と面会し、遺憾の意を伝えた。渡辺議長によると、市長は「残された課題もあるので与えられた任期まで頑張りたいが、続けられるかどうかは自分一人では判断できない」と述べた。
中川市長を巡っては、2022年4月に「直江津に商店街はない」と発言。23年7月には、市内の私立高校について「レベルがちょっと下の方にある」と述べるなど、これまで不適切発言を繰り返していた。
中川市長は6月に、10月26日投開票の市長選に立候補を表明したばかり。その直後に再び不適切な発言をし、近藤彰治副議長は「首長の器ではない」と突き放した。
市議会の最大会派「久比岐野」の代表で、昨年7月の臨時会で辞職勧告決議案を提出した橋本洋一市議は「次はないと言ったにもかかわらず、また不適切発言をした」と指摘。その上で「議会からの抗議文書を受け取った後、自ら身を処さない場合は不信任決議案の提出を検討する」と強硬な姿勢を示した。
昨年7月の臨時会で辞職勧告決議案に反対した会派「みらい」の石田裕一市議は「市政の混乱を避けたいと反対したが、なぜ繰り返してしまったのか。信頼を失ってしまった市のイメージダウンの影響は大きい」と懸念した。
市長選を巡っては中川市長と元市長の宮越馨市議が出馬を表明しているが、構図に影響を与えるとの見方も出ている。
本城文夫市議は「今回の不祥事が引き金となって、中川市長への風当たりが強まるだろう。参院選後、第3の候補を擁立する動きが活発化するのでは」と話した。...