
華やかな舞台の裏側には、スポットライトの当たらない闇がある。会社員でありながらタレント性を求められるテレビ局のアナウンサーは、弱肉強食の世界にいる。番組起用を巡り、限られたポジションを争うさまは「いす取りゲーム」ともいえる。そこに渦巻く複雑な不安、焦り、嫉妬…。ローカル局も例外ではない。同僚との力関係やいびりの実態など、新潟県内の元テレビ局女性アナウンサーが肌で感じた「女子アナ」のリアルを告白する。
◆アナウンサーは「画面に映らないと意味がない」
10年ほど前、新潟県内のローカル局でアナウンサーをしていたS子さん(30代)は、苦い記憶を思い起こした。「アナウンサーはテレビに出て、初めて評価される職業だから」
同僚の女性アナウンサーの一人は、デジカメを手に職場でよく自撮りをしていた。ブログで公開するためなのか、自己PRに余念がなかった。「またやってるよ」。撮影に熱心な姿を目にするたびに、いら立ちがこみ上げた。「あの人、自撮りばっかりしていますよね」「取材に行かないんですかね」。先輩スタッフとの雑談で陰口を交えても状況は何も変わらない。彼女はレギュラー番組を持っていた。会社にとって重要な戦力だった。
番組に出演すれば、視聴者から認知される。その積み重ねが人気につながり、社内での評価に影響する。「アナウンス技術が高くても、英語が話せても、一瞬でも画面に映らないと意味がない。仕事をしていないのと同じ」。自分は...
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