柏崎の街並みを眺める荒尾哲也(左)ら。山と海に囲まれた柏崎の自然にも魅せられ、この地でスタジオを開設することを決めた=4月、柏崎市
北陸道柏崎インターチェンジにほど近い、柏崎市の国道に面した雑居ビル。3LDKのオフィスで、4人のアニメーターが黙々とアニメーション制作に励んでいた。ここは2019年に設立したアニメ制作会社・柏崎アニメスタジオ。経営するのは東京都杉並区にあるアニメ制作会社・スタジオガッツだ。柏崎どころか新潟とも縁もゆかりもなかった。そんな中で柏崎を選んだ。代表取締役の荒尾哲也(56)はこう言い切る。「われわれは柏崎に夢を見に来た」
スタジオガッツは人気アニメ「ONE PIECE」や「プリキュア」シリーズの作画などを手がけてきた実績がある。
業績好調の一方で、アニメ産業集積地の東京では、若いアニメーターが競争社会の中で挫折し、故郷に戻っていった。荒尾はそんな姿を見るたび、悩み、考えた。「だったら地方にある才能を迎えに行こう」
地方スタジオをつくるため、北は東北から南は九州まで全国各地を訪ね歩いた。「漫画・アニメのまち」をうたう新潟市も訪れたが、中心部の街の様相が東京とさほど変わらない印象を受けた。すでに制作スタジオも複数あったこともあり、新たな「風」は起こせないと感じた。そんな中で知人から紹介を受けたのが柏崎だった。
訪れた際、あるレストランであっけにとられた。店員が店の奥のテーブルで新聞を広げたまま、「いらっしゃいませ」と出迎えたのだ。「柏崎だったら等身大で暮らせそうだ」。業界の荒波にもまれた荒尾が地方に求めていた「ゆとり」を垣間見た瞬間だった。
柏崎の街を見渡す丘で思いを語る荒尾哲也=4月、柏崎市
スタジオ設置を決める前に見た「ぎおん柏崎まつり海の大花火大会」での風景もその一つ。「こんな規模の花火、東京だったら雑踏の中で高い料金を払って見るしかない。柏崎だとふらっと行って見られる」。柏崎で暮らす人の生活の豊かさを感じた。海と山に囲まれた美しい景色も、アニメーターが想像力を育むのに適していると思った。
柏崎にスタジオを開設して7年。この地で「風」を起こす-。荒尾が描いた夢は少しずつ形になってきている。
理想の職場目指し地方に活路 「薬屋のひとりごと」の作画も
アニメ制作の合間、スタッフと談笑する荒尾哲也(右から3人目)と長澤達也(同2人目)=4月、柏崎市
「その仕事に挑戦したいなら、絵コンテを描いてみようか」。4月、柏崎アニメスタジオで荒尾は、若手スタッフに優しく助言した。
柏崎アニメは、...












