
「学生時代に最も頑張ったことを教えてください」。画面の向こうから、ジャケット姿の面接官が優しく話しかける。自らを「みどり」と名乗るが、人間ではない。さまざまな企業の採用活動に携わる人工知能(AI)のキャラクターだ。
▽評価の一貫性
人材サービスの新興企業ROXX(ロックス)が開発した。応募者がスマートフォンやパソコンを通じて面接を受け、その発言と振る舞いをAIで分析する仕組みだ。
質問の内容や評価の基準は、みどりを使う企業が自由に設定できる。例えば専門性の高い職種では技術的な問いを多くし、営業職では表情や声のトーンを重視する、といった運用も可能という。
東京都内のオフィスで模擬体験した記者に対し、みどりは「具体的な成果は」と回答を掘り下げる質問もした。約8分で面接が終わると、採用側に向けたリポートがすぐに完成。特別に見せてもらうと「自分の弱みを客観的に捉えている」「カメラをまっすぐ見ている」などの評価とともに点数が付いていた。

担当者ごとに感覚が異なる人間の面接と比べて、AIは評価の一貫性を保ちやすいとされる。面接官との日程調整も必要なく、選考のスピードアップにつながるとして飲食やIT、小売りなど幅広い業界で導入が進む。
▽もやもや
AIに命運を左右されつつある応募者はどう感じているのか。
都内の大学院に通う男性は自宅から、ある企業のAI面接を受けた。時間は40分ほど。やりとりに違和感はなかったが、結果は不採用だった。
男性にとってAIは身近な相談相手だ。自己分析や業界研究など就職活動でもフル活用した。それでもAI面接は「評価の基準が分からなかった。人の面接なら感じられる手応えもなく、もやもやした」と戸惑いを口にした。
選考にAIをどう組み込むか、企業も模索する。大手商社の丸紅は今年行った新卒採用で、人が行う2次面接とAIによる面談の両方の結果を踏まえ、次のステップに進む人を決めた。その際「学生と企業が理解を深め合うこと」を目指し、AI面談を受けた全員に評価のリポートを送った。
▽責任
先端技術に詳しい三菱総合研究所の飯田正仁さんは、AIが人間を評価することへの懸念に対し「企業側は利用の基本方針を明らかにするなど、説明責任を果たすことが重要だ」と指摘する。またAIに判断を委ねすぎると、中長期的には採用人材の画一化につながりかねず、人とAIがどう協働するかが問われているとした。
三菱総合研究所の飯田正仁さん(左)、取材に応じるROXXの坂本珠里さん
みどりを開発したロックスは、AIの評価を必ず人が確認する設計にしているという。事業を担う坂本珠里さんは未来をこう予測する。「AIが応募者の情報を可視化した上で、人が時間をかけて向き合う。こうした役割分担が広がっていく」
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進化したAIが、社会の在り方を大きく変えている。人間はどのように共生すべきか。現状と課題を追った。
社会が適応、受注ゼロに
世間が新年の幕開けを祝っていた2025年の元日、文芸翻訳家の平野暁人さんは「もうすぐ消滅するという人間の翻訳について」と題した記事を投稿サイト「note(ノート)」で公開した。「24年末現在、僕の手元にきている来年の依頼は0件。25年の収入見込みも畢竟(ひっきょう)(=つまり)、0円ということになる」。赤裸々な告白が...











