J2アルビレックス新潟のJ1昇格が決まった。14シーズン在籍したJ1からJ2に降格して5年。降格から「J1復帰」に至る道のりを、当時の写真とともに振り返る。
◆[2017年]監督交代実らず、14年目の降格
このシーズンまでJ1での降格争いを何とか勝ち残ってきた新潟は、三浦文丈氏を新たに監督に招き、J1で14年目のシーズンをスタートさせた。しかし、レオ・シルバ、ラファエル・シルバら力のあるブラジル人選手が抜けたチームは苦戦。開幕後の10試合でわずか1勝と不振を極めた。5月に三浦氏は退任。片渕浩一郎氏の監督代行を挟み、呂比須ワグナー氏が監督に就いた。
監督交代後も成績は上向かず、16戦未勝利とどん底を味わった。11月、第32節ホーム甲府戦には勝ったが、他会場の結果で降格が決まった。シーズン終了後にはDF大野和成、MF小泉慶らの移籍が発表された。
最終成績 7勝7分け20敗 勝ち点28 17位

第32節の甲府戦後、降格が決まりスタンドに頭を下げる新潟の選手たち=2017年11月18日、デンカビッグスワン

甲府戦のCKで競る新潟の選手たち。試合には1-0で勝ったが、降格が決まった=2017年11月18日 デンカビッグスワン

甲府戦直後の会見に臨む呂比須ワグナー監督(当時)。降格について「自分の責任」と繰り返した=デンカビッグスワン
◆[2018年]1年でのJ1復帰、遠いまま
J1を制した磐田の黄金時代の監督、鈴木政一氏を新たな指揮官に据え、2003年以来となるJ2での戦いが始まった。新加入はMF高木善朗、FW渡邉新太、MF戸嶋祥郎ら。鈴木アルビは初陣こそ勝ったものの、徐々にロングボールやロングスローを多用するJ2クラブに押し切られるようになった。
8月、22チーム中19位と、J3降格圏が迫ったクラブは監督交代を決断。ヘッドコーチだった片渕浩一郎氏が監督に就いた。クラブは9月には強化部長を解任。中野幸夫社長のシーズン終了後での退任も決まるなど、体制一新でJ2残留を目指した。
最終成績 15勝8分け19敗 勝ち点53 16位

2018年シーズンの新体制会見。鈴木政一監督(当時・手前中央)の左隣に新加入の高木善朗が並ぶ=2018年1月11日、デンカビッグスワン

第13節大分戦でゴールを決める渡邉新太(中央)。渡邉らルーキーが活躍するも、チームは下位に沈んだ=2018年5月6日、デンカビッグスワン

第36節讃岐戦でゴールを決めるFW田中達也(中央・現アシスタントコーチ)。チームはこの試合で5連勝を飾ったが、最終成績は16位だった=2018年10月6日、デンカビッグスワン
◆[2019年]再びの監督交代と得点王誕生
片渕監督と是永大輔・新社長の下、レオナルド、シルビーニョら多数の外国人選手が加入した。開幕から1カ月半の4月、10位という成績で片渕監督は解任となり、吉永一明氏が新たに監督に就いた。吉永アルビは全員攻撃、全員守備をベースに攻守の切り替えを重視するサッカーで一時は一桁まで順位を上げたが、昇格戦線には絡めぬままシーズンを終えた。28得点を挙げたレオナルドはリーグ得点王に輝き、シーズンオフにJ1浦和に移籍した。
最終成績 17勝11分け14敗 勝ち点62 10位

2019年シーズンの新体制会見。7人の外国籍選手や本間至恩(右から2人目)らが加わった=2019年1月10日、デンカビッグスワン

第14節愛媛戦で攻め込む新潟の選手たち。奥でシーズン途中に就任した吉永一明監督が見つめる=2019年5月18日、デンカビッグスワン

最終節の長崎戦でゴールを挙げ、ほえるFWレオナルド(中央)。J2得点王を獲得した=2019年11月24日、デンカビッグスワン

最終戦後のセレモニーで記念写真に納まるGK野澤洋輔(左)とFW矢野貴章。契約満了が発表されていたベテラン2人は最終戦のピッチに立ち、サポーターに見送られながら退団した=2019年11月24日、デンカビッグスワン
◆[2020年]昇格への礎、チームのスタイルを転換
クラブ初のスペイン人監督、アルベルト(現登録名はアルベル)氏が就任。走力をベースにした速攻型から、ボールを保持しながらポジショニングとパスワークで攻撃を組み立てるスタイルへと転換した。GK小島亨介、MF島田譲らが加入した。
2月の開幕戦を3-0で快勝した後、新型コロナウイルスの感染拡大でリーグは約4カ月にわたって中断。その後無観客で再開した。残り10試合の時点で4位まで浮上したが、けが人が多く出たこともあり、失速。ラスト7試合は1分け6敗だった。10月には主力のブラジル人選手が酒気帯び運転で摘発される不祥事も発覚し、その後に是永社長が退く事態となった。
最終成績 14勝15分け13敗 勝ち点57 11位

2020年シーズンの新体制会見。中央にアルベルト監督(当時)、島田譲(右から2人目)、田上大地(右端)らが加入した=2020年1月11日、新潟市中央区

開幕節の群馬戦で多くのサポーターを背にプレーする新潟の選手たち。試合は3-0で勝ったが、この直後に新型コロナウイルスでリーグは中断した=2020年2月23日、正田醤油スタジアム群馬

リーグ中断期間中、共同主将のDF堀米悠斗(右から2人目)とMFシルビーニョ(左)を呼んで話し込むアルベルト監督(当時・左から2人目)=2020年4月1日、聖籠町のアルビレックス新潟専用練習場
◆[2021年]13戦無敗のクラブ新記録、悲願はかなわず
アルベルト監督体制の2年目は、高宇洋、藤原奏哉、千葉和彦らが新加入し、「ボールと試合を支配するスタイル」を昨シーズン以上に表現できるようになった。開幕から13戦無敗と怒濤(どとう)のスタートダッシュで、前半戦は首位争いの中心に。昇格の機運が高まったが、後半戦は新潟対策を取られる中、ボール保持にこだわって得点力が低下。勝ちきれない試合が増えた。
最終順位は降格後で最高の6位。チームの土台を築いたアルベルト氏は退任。コーチだった松橋力蔵氏の監督就任が発表された。元日本代表のFW田中達也が引退した。
最終成績 18勝14分け10敗 勝ち点68 6位

開幕節の北九州戦で、新加入のFW鈴木孝司がヘディングシュートを決めて2-1と勝ち越す=2021年2月27日、ミクニワールドスタジアム北九州

第5節東京V戦を7-0で大勝。ルーキーのMF三戸舜介もゴールを決めた=2021年3月27日、デンカビッグスワン

第37節磐田戦で攻めるMF高木善朗(中央右)とロメロ・フランク(同左)。攻勢に出ながらもゴールを奪えず、0-1で敗れた=2021年11月3日、デンカビッグスワン

最終節終了後のセレモニーでスタンドに掲げられた、「必ず昇格達成を」と書かれた横断幕=2021年12月5日、デンカビッグスワン
◆[2022年]さあ、ともにJ1へ
松橋力蔵監督は、昨シーズンまでのスタイルを継続しつつ、常にゴールを狙う意識を植え付けた。開幕前のキャンプで新型コロナウイルス感染が相次ぎ、開幕から4戦勝ちなしと序盤は苦しんだ。それでも第5節甲府戦からホーム10連勝を達成するなど、高い攻撃力を武器に第17節以降は2位以上をキープした。
7月には攻撃の核だったMF本間至恩がベルギーに移籍したが、若手らが次々と活躍。オーストラリア代表のDFトーマス・デンやGK小島ら守備陣の安定も相まって、リーグ戦2試合を残して2位以内が確定、J1昇格を決めた。

J1昇格を決めて喜ぶ新潟の選手とサポーター=2022年10月8日、デンカビッグスワン