寝ている間に目的地に着く。こんなに楽な旅はない。 駅前で軽く飲み、つまみとカップ酒を寝台車に持ち込む。 ガタンと軽い衝撃を体に感じ、車窓を眺めれば、夜のホームがゆっくり遠ざかっていく。 レールの音を子守歌にいつしか眠りに落ちる。ふと目覚めると列車は京都を過ぎ、間もなく大阪だ。 大阪駅に降り立てば、まずは立ち食いうどんで腹ごしらえ…。 こんな夢のような旅がつい数年前まで可能だった。 急行「きたぐに」のありがたさを今あらためて感じる。 初めて乗ったのは高校1年の春休み。 ユースホステルに泊まりながら京都、奈良を1週間ほど巡る一人旅の始まりがこの夜行急行だった。 当時は電気...
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