「ほの明かり」と「味わい」は深い仲である。 例えば直江津駅から海に向かって10分ほど歩くと、こんな小路に迷い込む。 小さなおでんの店。おかみさんが切り盛りする。 店開きから何十年もたつらしい。 あめ色のカウンターが、過ぎた年月を物語る。 人づてに聞き、初めてのれんをくぐったのは10年ほど前だった。 客の大半は常連だが、いちげんにも温かい。 大相撲のテレビの音と「ダイコンとたまご!」「熱かん、もう一本」 の声が重なる。 メニューはおでんにビールに酒。いたって簡素だ。 だけど、というか、だから、というべきか。飽きない。 耳を澄ませば、海鳴りが聞こえてきそうな道を駅へと...

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