毎日、同じ時間の電車に乗っていると、 いつも会う人がいるものです。 もちろん言葉を交わすことはありません。 でも、分かる。 「あ、あの人だ」 ドアのすぐ橫の定位置で文庫を読んでいる。 もうじき定年なのでしょうか。 白い髪と使い込まれた黒カバンが長かったサラリーマン人生を 物語っています。 その前のつり革につかまっている彼はきっと高校の野球部員。 たぶん泥だらけのウエアが入っているはずの大きなバッグ。 目指すは「夏の甲子園」でしょう。 そんな季節が近づいてきました。 ポジションはどこなのだろう。 日焼けした顔でスマホに見入っています。 ラインの相手は彼女か、...
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