
仕事や育児に忙しい子育て世代。日々の家事をこなし、協力しながら子育てをし、夫婦が円満に暮らすにはどうすればいいのでしょうか。このほどコミックエッセー「夫を捨てたい。」を書籍化した、人気インスタグラマーで漫画家のいくたはなさん(新潟市)は、結婚当初、「同じだけ稼いでいるのに、家事も育児もすべて妻がやるの?」とやるせない思いになったといいます。今は4児の母で、夫と協力して子育てと仕事を両立しているいくたさんに、「夫を捨てたい」とまで思い悩んだ経験や危機を乗り越えた話など聞きました。

会社員として働きながら育児経験や夫婦のできごとを漫画に書き、インスタグラムなどSNSに投稿。2016年から始めたインスタグラムは、フォロワー22・5万人(2月現在)の人気。2021年1月にフリーの漫画家、イラストレーターとして独立。著書に「こじらせ処女の初彼氏」(光文社)「夫を捨てたい。」(祥伝社)
https://www.instagram.com/iktaa222/?hl=ja
― 理解してくれない夫にイライラ ―

急速に少子高齢化が進む中、女性の就業率は上がり、共働き世帯も増えています。一方、にいがた、びよりの「働き方と家事分担」に関するアンケート(2020年9月実施)では、家事分担が依然女性に偏重している傾向が見られ、ママたちから不満の声も寄せられました。
第1子出産前後から、第2子出産までの経験を漫画にした著書「夫を捨てたい。」でも、子どもが生まれても何もしてくれない夫に不満を持つ姿が描かれています。



子どもが生まれるまでは、こんな感情になるとは思いもよりませんでした。授かり婚だったので、結婚も妊娠もうれしかった。家事も育児もわたしがやってがんばって、いい奥さんとお母さんになろうと思っていました。
ところが実際に育児が始まると、想像以上に大変でした。夫は子どもが生まれる前と生活を変えていないのに、わたしは24時間育児に追われ、夫に対してイライラしました。
― 夫に気持ちを伝えられなかった ―



つらい気持ちを夫に訴えることはしなかったのですか?

第1子の出産前後は、不満や怒りを夫に伝えることができませんでした。「言わなくても夫が理解してくるはず」「夫は子どもの父親なのだから、家族を優先するはずだし、味方してくれる」と思っていました。夫は悪気があったわけではありませんし、「一緒にうまくやっていこうね」というスタンスでしたが、夫婦はすれ違っていきました。長男が生まれてすぐ、家事や育児に追われて社会に取り残されたような気持ちになり、そういうときに寄り添ってもらいたかった。
― 看病で仕事を休むのもママ ―



仕事と育児の両立に苦労する様子も描かれています。子どもが発熱し、保育園からの呼び出しに対応するのはいつもはなさんで、苦悩するシーンも印象的です。

2人で働いて家計を支えようと納得して働いていましたが、子どもの体調不良に対応するのは当たり前のようにわたしでした。理解のある職場でしたが、罪悪感を抱いたこともあります。夫が育児で休みを取ってはいけないことはないし、職場が禁じているわけではないけれど、「なんとなく」取りにくい雰囲気があったのかもしれません。今後は、男女共に誰でも、子育てなど家庭の事情が理解され、看護休や育休が取りやすい社会になってほしいと思います。

4人のお子さんがいるいくたさん。家事分担での不満はありますか?

家事分担を「二等分」にしようとすると無理が出てくるように感じています。得意な分野やこなせる家事の能力値も違ってきます。例えば、我が家では夫は洗濯物をきれいに等間隔に干すタイプ。でもわたしは、細かくきちっとすることは苦手です。以前、つわりが辛いときに、夫に等間隔で干してくれと言われ、カチンときました。



それからは、「文句がある人がその家事をしよう。人のやり方に口を出さない」ということにしています。洗濯はこれまで夫の担当でした。でも最近は、わたしが時間に余裕があるときはやるようにしています。分担だと思わないで、干すことがエクササイズ代わりになると思うと楽しくやれます。夫は家事が減って、その分子どもの面倒を見てくれますし。試行錯誤しながらも、お互い納得し、相手を思いやりながら家事をこなしていきたいと考えています。
― 今は最強の子育てパートナー ―

今は、二人で協力して分担できているのですね。どのように解決してきたのですか。

漫画の中でも夫に気持ちをぶつけるシーンがあります。気持ちを伝えることで、夫もわたしの状況を理解してくれるようになりました。言わなくても気持ちが伝わると思っていました。でも、ちゃんと伝えないと伝わらないのだと痛感しました。
自分の気持ちや不満を伝え、つらい状況は報告し、少しずつ夫婦で問題を乗り越えてきました。



つらい時期もありましたが、夫とは今は最強の子育てパートナーとして、4人の子どもを育てています。わたしも伝え方や考え方が変わり、夫ともいい関係を築けるようになってきました。妊娠出産やその後、ノンストップで24時間育児に向き合うママと違って、男性は体の変化がない分、急に「パパ」にはなれないのかもしれません。妊娠中から両親教室などに参加するなど、パパも育児の「予習」をしたり、育休を取得したり、積極的に子育てに関わることが必要かもしれません。
― 同じ悩みを持つママが少しでもラクになれば ―

家事分担や夫婦のすれ違いで悩むママパパへメッセージはありますか。

インスタグラムで自分の経験をつづったことで、多くのママパパから共感の声や相談が寄せられました。このコミックエッセーでは「悩んでいるのはあなただけではないよ」と伝えたい。読んで少しでもラクになってもらえればうれしいです。わたしたちも、今も言い合ったり、悩んだりしながら二人で日々乗り越えています。これからも発信し続けたいです。
書籍
「夫を捨てたい。」
いくたはな 著
コミック版 980円+税
祥伝社
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