新潟水俣病の早期解決へ向け、新潟市議会市民厚生委員会で請願陳述する新潟水俣病共闘会議の高野秀男幹事長=10月1日、新潟市役所
新潟水俣病の早期解決へ向け、新潟市議会市民厚生委員会で請願陳述する新潟水俣病共闘会議の高野秀男幹事長=10月1日、新潟市役所

 新潟水俣病1965年、新潟県の阿賀野川流域で公式確認された。阿賀野川上流の鹿瀬町(現阿賀町)にあった昭和電工(現レゾナック・ホールディングス)の鹿瀬工場が、アセトアルデヒドの生産過程で生じたメチル水銀を含む排水を川に流し、汚染された川魚を食べた流域住民が、手足の感覚障害や運動失調などを発症する例が相次いだ。56年に熊本県で公式確認された水俣病に続く「第2の水俣病」と呼ばれる。の公式確認から2025年で60年になるのを前に、早期の全面解決を目指す動きが活発化している。被害者のいる新潟県阿賀野市など4市町の議会は9月定例会で、政府などに解決に向けた取り組みを促す意見書提出を決めた。10月8日には被害者団体と環境省が解決策を探る実務者協議の初会合が開かれる。高齢化が進む被害者側は「一刻の猶予もない」として、新たに発足した石破茂政権に早期解決へ実効性のある話し合いを求める。

 「市議会の要請が、一日も早い解決への力になる」。10月1日、新潟市議会市民厚生委員会で、新潟水俣病の被害者、支援者らでつくる「新潟水俣病共闘会議」の高野秀男幹事長が請願の採択を訴えた。7日の本会議で可決される見通しだ。

 請願は市議会に対し、被害者、国、原因企業による話し合いの場の設置などを政府、国会に要請するよう求めた。阿賀野、五泉両市と阿賀町の議会も既に同様の請願を採択しており、阿賀野川流域の4市町がそろって意見書を提出する運びとなった。

▽第5次訴訟の長期化

 背景には、2025年、新潟水俣病の公式確認から60年の節目となることに加え、24年5月に熊本県水俣市で伊藤信太郎前環境相と懇談した被害者団体側の発言が遮られた問題がある。

 問題を受け、新潟県の被害者団体と伊藤氏の懇談を翌日に控えた県議会6月定例会最終日。共闘会議の請願を受け、最大会派の自民党が提出した意見書案を全会一致で可決し、今回の4市町の議会が続く流れをつくった。

 県議会で水俣病に関する意見書が可決されるのは2012年以来で、自民が主導したのは初めて。阿賀野市が地盤の帆苅謙治県議は「裁判も踏まえた」と説明する。水俣病被害を訴える男女が国と原因企業の昭和電工(現レゾナック・ホールディングス)に損害賠償などを求めた新潟水俣病第5次訴訟水俣病被害を訴える新潟市などの男女が2013年12月、国と昭和電工(現レゾナック・ホールディングス)に損害賠償などを求め新潟地裁に提訴した訴訟。原告が水俣病かどうかや、九州に続き新潟県でも水俣病が発生したことに対する国の責任の有無が主な争点となっている。が、2013年の提訴以来、長期化...

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