
新潟県の2025年度一般会計当初予算案について、花角英世知事は自らの公約「住んでよし、訪れてよしの新潟県」づくりに向け、「新たな一歩を踏み出す予算」と説明した。25年度から始まる新総合計画で示した6本柱の重要政策のほかにも、主要な事業がある。2月12日に発表された予算案の中から、原子力防災や地域医療、交通、教育など主な分野の事業を紹介する。
◆[原子力防災]6方向避難道路へ調査費
東京電力柏崎刈羽原発での重大事故に備え、県は原発周辺から6方向の放射状に逃げる避難道路の整備に着手する。1月に国と県で合意した優先箇所に基づき、橋の耐震化やのり面対策などを行うための調査費として5億7200万円を計上。北陸道米山サービスエリア(柏崎市)への緊急進入路の整備費3286万円を盛った。全額国費で賄う。
事故時に即時避難が難しい要配慮者の被ばくを避けるため、県は国の交付金を活用して放射線防護対策施設(シェルター)の整備を進めている。柏崎市内4施設の整備費用として4億8765万円を付けた。また、住民の避難所となる学校体育館での防護対策を新たに検討するため、国とともに150万円で調査する。

能登半島地震では道路の寸断などにより孤立地域が発生し、原発事故時の避難の課題が顕在化した。こうした課題に対応するため、内閣府は新しい交付金メニューを創設。原発から30キロ圏で孤立の恐れがある指定避難所の備蓄物資を増強する事業として1130万円を付けた。内閣府によると、柏崎市と上越市の計9カ所の避難所が対象になる見込み。
◆[地域医療]休日夜間でも遠隔診療
医療再編に伴う住民への影響を和らげながら深刻な医師不足を補い、持続可能で質の高い医療が受けられる体制づくりを目指す。
2023、24年度に5市町で行ったへき地でのオンライン診療モデル事業の成果を生かし、他のへき地での導入経費などを370万円で支援する。さらに、地域の開業医らが輪番で対応する休日夜間診療でも医師確保が課題となっており、オンライン診療を試験的に導入する。1688万円を付けた。
医師確保では、新潟県で一定期間働けば返済免除となる学費を貸与する大学医学部の「地域枠」を、前年度から2人増やし79人とする。関連予算を11億6447万円に増やした。臨床研修医確保に向けたプロモーションも1434万円に拡充。県外に一定数流れる新潟大の医学生を県内に定着させるため、病院説明会を強化する。

JA県厚生連村上総合病院が分娩(ぶんべん)対応を休止することに伴い、村上市外で出産する妊婦に対し、交通費などを支援する村上市の事業を県も補助する。出産時だけでなく妊婦健診や産婦健診の交通費も対象とし、200万円を盛った。
◆[交通]空白域解消へ資源活用
人口減少に伴う利用者の減少や運転手の不足により、路線バスなど地域公共交通の維持が困難になっている。地域の移動手段確保のため、交通資源の「フル活用」を進める。スクールバスや宿泊施設の送迎バスなどを活用する市町村や事業者への支援を倍増し、6841万円を付けた。
新潟市南区など県内の地域でも運用が始まった「日本版ライドシェア」。交通空白域をカバーする手段の一つとして、さらなるエリア拡大を図る。市町村や事業者にシステムの導入費などを支援する。新規で1000万円を盛った。

新潟空港のコンセッション(運営民営化)に向け、新たに2920万円を計上した。国は全国の国管理空港を民営化する方針を掲げているが、新潟空港は収益性が低く、実現の道筋が立っていない。空港施設のうち空港ビルの資産価値を改めて調査し、国への働きかけにつなげていく考えだ。
残業時間の規制強化などにより人手不足の状況が続く運輸業界への対応も強化する。物流ネットワークの効率化を図るため、異なる荷主間の共同配送などの取り組みを支援する。新規で2778万円とした。
◆[教育]遠隔拠点開設に向け準備
2025年度から10年間の県立高校の将来構想に基づき、遠隔教育の環境を整えるほか、不登校対策にも力を入れる。
遠隔教育推進事業には5595万円を盛った。遠隔教育の実施校を、下越や上越エリアの一部地域にも拡大。26年度に豊栄高校(新潟市北区)と新潟北高校(新潟市東区)を統合した新設校に配置予定の「遠隔教育配信センター」開設に向けた準備も進める。
深刻化する不登校への対策費用を拡充し1億7534万円を付けた。登校はできるが教室に入れない児童の学習を支える「校内教育支援センター」を新たに設置する小学校に対し、専属の支援員を配置する経費を市町村を通じて助成する。不登校やいじめの防止に向けた指導資料の開発にも取り組む。
教員の負担軽減策としては、教員の事務作業を手助けするスクールサポートスタッフの配置や、配置時間の拡充を進める。市町村に対する支援事業に6169万円を充てた。
教員のなり手不足解消も目指す。教員採用試験への出願者数を増やすため外部に委託し、新たな教員募集サイトを構築するほか、教員の魅力を伝えるプロモーション動画の作成を行う。関連費用に1350万円を計上した。
◆[農林水産]産官学、棚田の魅力発信
農林水産省が認定する「つなぐ棚田遺産」の数が全国1位の新潟県。交流人口の拡大や地域活性化につなげるため、産官学などを交えた「にいがた棚田フォーラム」を立ち上げる。今後の戦略を練るほか、交流サイト(SNS)を活用して棚田の魅力を発信するイベントを開く。予算額は390万円。
加工用など非主食用米を「省力・低コスト・多収」で生産するモデルの実証を行い、もうかる農業の確立を目指す。1350万円を新規計上し、実証結果を踏まえて国に政策提言する。
県産農林水産物のブランド化をさらに進める。世界文化遺産に登録された「佐渡島(さど)の金山」などと連携したPRを行い、品質の高さを数値化して差異化につなげていく。6664万円を盛った。

鳥インフルエンザ対策では、養鶏場内を複数の区域に分けて飼育する「分割管理」の導入を後押しする。新たに養鶏業者に助言などをする専門家チームを設置するほか、導入に必要な機械などの購入を補助する。2000万円を計上した。
◆[公共事業]防災・減災、強靱化に力
地震や豪雨など...