夕闇に浮かぶ公益社本町。社員はいつとも知れない人の死に対応し続ける=新潟市中央区
夕闇に浮かぶ公益社本町。社員はいつとも知れない人の死に対応し続ける=新潟市中央区
葬儀場の事務室で、葬儀の規模や形式について打ち合わせる新潟公益社の社員=新潟市中央区

【2021/02/08】

 新潟市中央区の葬儀場に、今夜も明かりがともった。大切な人を亡くした遺族は、ゆっくりと考える間もなく、追われるように通夜や葬儀に臨む。

 「弔問の方がいらっしゃいましたよ」。案内に立つ遺族に、新潟公益社の社員、五十嵐陽(あきら)さん(42)が穏やかに声を掛ける。僧侶の読経が始まると、今度は、高齢の遺族にゆっくりと歩み寄り、身をかがめて焼香を促した。

 ウイルス禍にあっても、人の死は待ってくれない。葬儀を通して、残された家族に、その死をどう受け入れてもらえるか。葬儀はどんな人数が、どんな形式がいいのか。ウイルスに対する考え方も、その家庭ごとに全く異なる。

 「経済事情やウイルスを気にして家族だけでという人もいれば、最後の機会だからと県外の親戚や友人を呼びたいという人もいる。それぞれの思いに応えたい」。五十嵐さんは言う。

 人の死とウイルス-。葬儀に携わるものとして、それぞれにどう向き合うか。模索する日々が続く。

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 昨秋のことだった。五十嵐さんは、60代の女性がたった一人で父親を見送る葬儀を担当した。新型コロナウイルスのことを考え、密を避けるために親族も呼ばないという、女性の選択だった。納棺の前に、一人で丁寧に父親の遺体を拭いてあげていた姿を思い出す。

 大切な人を送り出す場面にまで侵食してくる新型ウイルスに、五十嵐さんは恨めしい思いを募らせる。

 故人の顔を見て手を合わせたい-。葬儀は、それに応える「一つの形」だと五十嵐さんは思う。「私たちの仕事は遺族の希望に寄り添うこと。ウイルス禍だから駄目、というのではなく、どうすれば望む葬儀ができるのかを一緒に考えたい」

 葬儀のない日中、葬儀場の事務室では、居合わせた社員が、それぞれ担当する葬儀について意見を交わす。決して「不要不急」ではない人の死を取り扱う葬儀の場も、新型ウイルスと無関係ではいられなくなっている。

 通夜や葬儀とは別の時間帯に焼香だけをしてもらい、人の密集を避ける「事前焼香」を取り入れた。飲食をともにすることが感染拡大の一因と言われたことから、通夜振る舞いに出される料理を折り詰めにして、参列者に持って帰ってもらう選択をできるようにもした。

 県内でも、新型ウイルスによる死者が出ている。2020年2月6日までに12人が亡くなった。「そのうち、うちにお願いしたいという遺族が出てくるだろう」。その時が来ることを想定し、五十嵐さんを含めた社員同士は日々、話し合いを続ける。

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 公益社では、これまでに数々の葬儀が営まれてきた。会社に入って20年になる関武浩さん(57)はこの間、「死」に対する考え方が大きく変わったと感じている。

 「自分が入社した頃は『死ぬ』ということについて話すのがはばかられるような空気が世の中にありましたよ」

 葬儀の希望など死後のことを生前に整理して書き残す「エンディングノート」が広く知られるようになって以降、死がタブーではなくなったと関さんは思う。

 公益社も2007年に葬儀の生前予約制度を始めた。祭壇に飾る花は自分が好きなこの花を、葬儀の最中にかける音楽はこの曲を…。規模や形式を自分で決めておくことは、今では珍しくなくなった。

 核家族化、長寿化、価値観の多様化、そしてウイルス禍。さまざまな要因から、葬儀の規模は縮小傾向にある。それでも、関さんには変わらない思いがある。「10の家族がいれば、10通りの葬儀がある。ご遺族が納得して故人さまを送り出す手伝いをすること。私たちの仕事はそれに尽きるんですよ」

 様相は変わっても、故人の生きた証しは、葬儀のそこかしこに表れる。