
本紙で「ウチナー評論」を連載する作家の佐藤優さんが佐渡市を訪れ、渡辺竜五市長と対談した。コメ問題や観光振興などをテーマに、佐渡の持つ強みや課題などについて広く意見を交わした。対談は6月27日、佐渡市役所で行われた。佐渡をテーマにした地域情報誌「Ikki」が企画した。
◆「佐渡の水田を見て驚いた」
【佐藤】佐渡に初めて来て水田を見て驚いた。あぜ道が(除草剤を使っていないため)緑だから。今のコメ危機の中で、日本は食料自給を諦めた方がいいと言われているが、佐渡は人口をはるかに超える量のコメを作っている。しかも環境に非常に配慮しながら。一つのモデルケースになる。
【渡辺】佐渡のコメは2004年に台風で壊滅的な被害を受けて、そこから3年間、売れなかった。品質もよくないし災害に弱いと。そこから環境保全型の認証米制度を作った。
今は全島で農薬と化学肥料を減らす「5割減減」をし、欧州で規制されているネオニコチノイド系の農薬も使っていない。果樹農家があり、ミツバチの交配に影響が出るためだ。こんな所はそうない。農家が頑張ってきて、熱心に買い支えてくれる人たちがいる。だから先日は佐渡コシが全銘柄中最高値をつけた。そうした取り組みを消費者に知っていただいてお金を払ってもらうことがすごく大事。今回のコメ問題ではそうした議論が全部抜けている。
◆コメ問題は「安全保障」

【渡辺】今回の騒動はコメの価格が動いても、物自体が一体どうなってるのかの議論が進まない。農家にすれば、毎年同じことをやっているのに、なぜこんなことが起きるのか戸惑っている。国の農業政策でやってきたことと、今起きていることにものすごい乖離(かいり)がある。米価が下がって評価しているのは都市部の住民で、農家の見方は違うのでは。
【佐藤】食糧管理法(食管法)を廃止して減反政策を進めてきた。その中で需要と供給のバランスが取れなくなり、コメの値段が上がったなら、なぜそれを政策的に下げる必要があるのか。

【渡辺】昨年は大きな災害もなく、多少収量は下がったが悪くはなかった。なのに物流が途絶えるというのは、根っこに大きな問題を抱えているとしかいいようがない。
国の護送船団方式の農業は、護送船団方式に見えただけでまったくそうではなかった。これで輸入米を増やし、また生産調整をやるといわれたら、農家はたまらない。パン食に変えた人たちが、このあと(5キロ)4000円の米にどれだけ戻るのか。騒動のたびにコメの消費が減っていく。所得保障をベースにしながら、頑張る農家に利益が出る制度設計をしてほしい。それが農業再生で一番大事だと思っている。
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