
井上井月の墓=長野県伊那市
幕末から明治にかけ、長野県南部の伊那谷を放浪した俳人井上井月(1822~1887年)。世俗になびかない漂泊の生に根差した自然な句は、後世にも影響を与えた。30代で姿を現してから世を去るまでの約30年、彼はなぜこの地にとどまったのか。足取りをたどった。
長野県伊那市の田畑の一角。東に仙丈ケ岳、西に木曽駒ケ岳を望み、ここが盆地なのを実感する。杉の木の後ろに、井月の墓があった。墓石に〈降とまで人には見せて花曇〉との句が刻まれたというが、消えて読み取れない。わびしい。だが供えられた酒や小銭は、そう古くなく、慕う者が今も絶えないことを物語る。
市内には、他にも井月の句碑が、風景に溶け込むように多数あり...
残り695文字(全文:995文字)













