発表のポイント:

石英系PLCを用いたアレイ導波路回折格子(AWG)は、光通信の大容量化に貢献した技術として評価され、IEEEマイルストーンに認定されました。今回の認定は、NTTとして5件目となります。
本技術は25年以上にわたり世界中の通信網に普及し、現在もIOWN APNなど次世代光ネットワークの大容量化を支える基盤技術として活用されています。


 NTT株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:島田 明、以下「NTT」)が研究開発・普及推進した「石英系PLCを用いたアレイ導波路回折格子」の開発と普及(1992年-1996年)の功績が、電気・電子・情報通信技術分野の世界最大の学会IEEE※1から「IEEEマイルストーン」に認定されました。

 今後もNTTは世界をリードする技術を通じて、社会や産業、学術の発展に寄与していくとともに安心・安全で豊かな社会の創造に貢献していきます。


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写真1 銘板贈呈の模様
(左:2020 IEEE President 福田敏男氏 右:NTT代表取締役社長 島田明)

1.IEEEマイルストーンとは
 IEEEマイルストーンは、電気・電子・情報通信分野において、開発から25年以上にわたり国際的に高く評価され、社会の発展に大きく貢献してきた技術的業績を顕彰する制度です。IEEE(電気電子技術者協会)により 1983年に創設されました。これまでの認定例には、19世紀の 電話 や エジソン研究所※2、マルコーニの無線通信※3といった近代化の基盤となる技術・施設から、20世紀の テレビ、コンピュータ、インターネットなど、情報通信を支える重要技術が含まれています。

 NTTがこれまでに認定を受けたIEEEマイルストーンは、以下の4件です。

G3ファクシミリの国際標準化(1980年)(KDDI株式会社と共同、2012年4月認定※4)
高能率音声符号化に用いられるLSP方式の開発・普及(1975年)(2014年5月認定※5)
高品質光ファイバ量産製造技術「VAD法(気相軸付け法)」(1977~1983年)(古河電気工業、住友電気工業、フジクラと共同、2015年5月認定※6)
プッシュプル締結方式を採用した光ファイバコネクタ(1986~1991年)(2021年3月認定※7)

今回の認定は、5件目のIEEEマイルストーンとなります。


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写真2 IEEEより贈呈された銘板

2.石英系PLCを用いたアレイ導波路回折格子(AWG)とは
 光通信では、大量のデータを送るために、1本の光ファイバに複数の波長の光を重ねて伝送する「波長多重」方式が用いられます。例えば、1波長あたり毎秒100Gbitで通信し、N種類の波長を用いることで、合計で毎秒N×100Gbitの大容量通信が可能となります。この波長多重通信を実現するためには、複数の波長の光を1本のファイバにまとめる、まとめられた光を波長ごとに分ける、という機能をもつ波長合分波器が不可欠です。
 従来の波長合分波器の方式では(図1)、回折格子型は空間光学系を用いるため組立コストが高く量産に不向き、薄膜フィルタ型は多くの波長を扱うと構造が大型化するなどの問題がありました。


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図1 従来技術

 こうした問題に対し、石英系PLC(Planar Lightwave Circuit、平面光波回路)技術を用いたアレイ導波路回折格子(Arrayed-Waveguide Grating, AWG) 型波長合分波器は、導波路の光路長差を利用して、同一導波路に入力された波長多重光を波長ごとに分離・合波することができます。AWG型波長合分波器は、低損失、特性の安定性、高い信頼性、優れた量産性を兼ね備えており、数十以上の波長を同時に扱うことが可能です(図2)。これにより、量産化、小型化という課題を解決するとともに、光ファイバのもつ超広帯域性を最大限に活用できるようになりました。


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図2 石英系PLCを用いたアレイ導波路回折格子(AWG)型波長合分波器

3.技術の普及と社会への貢献
 NTTから技術移管を受けた NTTエレクトロニクス株式会社(現 NTTイノベーティブデバイス株式会社)およびPhotonic Integration Research Inc. ※8により、1996年にAWG型波長合分波器の量産化が実現されました。高性能・大規模・高信頼性の量産製品が実用化されたことで、1990年代後半から本格化した波長分割多重(WDM)方式※9による光通信の大容量化が進展しました。
 その結果、インターネットの普及とともに爆発的に増加した通信トラフィックを支える、現在の通信インフラの基盤構築に大きく貢献しました。

4.その後の展開と現在の位置づけ
 市場からのさらなる大容量化・高効率化の要求に応えるため、AWG型波長合分波器には、小型化、低損失化、温度変動に依存しない設計、透過帯域の平坦化などの高度化技術の研究開発が継続的に進められてきました。
 現在もAWG型波長合分波器は、世界中の通信網で利用される中核的な光部品として重要な役割を担っています。さらに、NTTグループが推進する IOWN APN(オールフォトニクス・ネットワーク) においても、大容量通信を実現するキーデバイスとして活用されています。

【用語解説等】
※1.The Institute of Electrical and Electronics Engineers, Inc.の略。世界160ヶ国以上から40万人近くの会員をもつ世界最大の学会。ニューヨークに本部がありコンピュータ、バイオ、通信、電力、航空、電子など様々な技術分野で指導的な役割を担っている。
※2.エジソンらが白熱電球、発電機、レコードなど数々の新技術を開発した研究所。
※3.1895年にマルコーニが世界で初めて無線電信の実験に成功。無線通信の幕開けとなった。
※4.報道発表 https://group.ntt/jp/newsrelease/pdf/news2012/1204/120405a.pdf
※5.報道発表 https://group.ntt/jp/newsrelease/pdf/news2014/1405/140522a.pdf
※6.報道発表 https://group.ntt/jp/newsrelease/2015/05/21/150521a.html
※7.報道発表 https://group.ntt/jp/newsrelease/2021/03/05/210305a.html
※8.NTT・三菱商事株式会社・米国三菱商事・バテル記念研究所の合弁会社
※9. 波長分割多重(WDM:Wavelength Division Multiplexing)方式
1本の光ファイバに複数の異なる波長の光信号を同時に重ねて伝送することで、大容量通信を実現する方式。