本研究では、45歳未満で生活習慣病の既往がない健康な成人労働者40名を対象としました。このうち、過去1年以上にわたり週1回以上の夜勤に従事している20名を夜勤群、夜勤のない日勤勤務者20名を日勤群としました。
血管機能は、FMD、baPWV、ABIを用いて評価しました。さらに、身体活動と睡眠状態については、加速度計を用いて7日間にわたり客観的に測定しました。夜勤直後の急性影響を避けるため、測定は夜勤翌日を避け、十分な休息がとれる条件下つ午前中に統一して測定しました。
その結果、夜勤群では日勤群に比べてFMDが有意に低値であり、血管内皮機能の低下が示されました。この差は、Share stressで補正した解析でも同様に認められました。一方、baPWVおよびABIには有意な差を認めませんでした。また、夜勤群では日勤群よりも睡眠時間が短いことが確認されました。
生活習慣との関連を検討したところ、全体ではFMDは睡眠関連指標と関連を示しました。さらに群別解析では、日勤群においてFMDは睡眠効率と正の関連、中途覚醒時間(WASO)と負の関連を示しました。一方、夜勤群においてFMDは座位時間と負の関連、軽強度身体活動と正の関連を示しました。すなわち、血管内皮機能に関連する生活習慣因子は、勤務形態によって異なる可能性が示されました。
筆頭 村田 裕康(元 保健学部 ポストドクター 現 Tartu Applied Health Sciences University)
責任著者 柴田 茂貴(保健学部 リハビリテーション学科 理学療法学専攻 教授)
研究のハイライト
夜勤労働者では、日勤労働者と比べて血管内皮機能(FMD)が低下しており、早期の血管機能障害が生じている可能性が示されました。
一方で、脈波伝播速度(baPWV)や足関節上腕血圧比(ABI)には差がみられず、構造的な血管障害に先行して内皮機能障害が現れる可能性が示唆されました。
日勤労働者では睡眠の質とFMDが関連し、夜勤労働者では身体活動量とFMDが関連しており、勤務形態によって血管機能に関わる生活習慣因子が異なる可能性が示されました。
本研究は、夜勤労働者における血管障害の早期発見と、生活習慣に着目した予防戦略の重要性を示す成果です。
概要
元・杏林大学 保健学部 博士研究員の村田裕康さん(現・Tartu Applied Health Sciences University)が筆頭著者、理学療法学専攻の柴田茂貴教授が責任著者となった研究チームは、健康な成人労働者40名(夜勤労働者20名、日勤労働者20名)を対象に、血管機能と生活習慣の関連を検討しました。その結果、夜勤労働者では日勤労働者と比べて血流依存性血管拡張反応(flow-mediated dilation: FMD)が有意に低下しており、血管内皮機能が障害されている可能性が示されました。一方で、動脈の硬さを示す脈波伝播速度(baPWV)や、末梢動脈の狭窄・閉塞の指標である足関節上腕血圧比(ABI)には群間差を認めませんでした。さらに、生活習慣との関連を解析した結果、日勤労働者ではFMDが睡眠の質と関連し、夜勤労働者ではFMDが身体活動量と関連していました。これらの結果は、夜勤労働が比較的若く健康な労働者においても早期の血管機能障害と関連する可能性を示すとともに、勤務形態に応じた予防戦略の必要性を示唆するものです。
本研究成果はJournal of Hypertensionにアクセプトされました。研究成果は,2026年5月15日に先行公開されました。
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背景
夜勤労働は生活リズムを乱し、高血圧、2型糖尿病、肥満などの生活習慣病のリスク上昇と関連することが知られています。これらは動脈硬化や心血管イベントの発症に深く関わるため、夜勤労働者における血管障害の早期発見と予防は重要な課題です。
血管機能の評価には、PWVやABIが臨床で広く用いられています。これに加え、FMDは、血管内皮機能を非侵襲的に評価できる指標として注目されており、動脈硬化の早期変化や将来の心血管イベントの予測に有用とされています。しかし、夜勤直後に一過性のFMD低下を示した報告はあるものの、夜勤労働が慢性的な血管内皮機能障害と関係するかどうかは十分に明らかになっていませんでした。
また、身体活動や睡眠は血管の健康維持に重要ですが、夜勤労働者ではこれらの生活習慣が乱れやすいことが知られています。そこで本研究では、夜勤労働者と日勤労働者の血管機能を比較するとともに、血管機能と身体活動・睡眠との関連を検討しました。
研究概要
本研究では、45歳未満で生活習慣病の既往がない健康な成人労働者40名を対象としました。このうち、過去1年以上にわたり週1回以上の夜勤に従事している20名を夜勤群、夜勤のない日勤勤務者20名を日勤群としました。
血管機能は、FMD、baPWV、ABIを用いて評価しました。さらに、身体活動と睡眠状態については、加速度計を用いて7日間にわたり客観的に測定しました。夜勤直後の急性影響を避けるため、測定は夜勤翌日を避け、十分な休息がとれる条件下つ午前中に統一して測定しました。
その結果、夜勤群では日勤群に比べてFMDが有意に低値であり、血管内皮機能の低下が示されました。この差は、Share stressで補正した解析でも同様に認められました。一方、baPWVおよびABIには有意な差を認めませんでした。また、夜勤群では日勤群よりも睡眠時間が短いことが確認されました。
生活習慣との関連を検討したところ、全体ではFMDは睡眠関連指標と関連を示しました。さらに群別解析では、日勤群においてFMDは睡眠効率と正の関連、中途覚醒時間(WASO)と負の関連を示しました。一方、夜勤群においてFMDは座位時間と負の関連、軽強度身体活動と正の関連を示しました。すなわち、血管内皮機能に関連する生活習慣因子は、勤務形態によって異なる可能性が示されました。
研究の意義
本研究は、比較的若く、明らかな生活習慣病を有していない健康な成人労働者においても、夜勤労働者では血管内皮機能が低下している可能性を示した点に意義があります。とくに、baPWVやABIといった構造的変化を反映する指標には差がなく、FMDのみが低下していたことから、夜勤労働に伴う血管障害はより早期の段階では内皮機能障害として捉えられる可能性があります。
また、生活習慣との関連は勤務形態によって異なり、日勤群では睡眠の質、夜勤群では身体活動量がFMDと関連していました。このことは、血管機能の維持・改善に向けた対策が一律ではなく、勤務形態に応じて重点を変える必要がある可能性を示しています。
本研究は横断研究であり因果関係を明らかにするものではありませんが、夜勤労働者に対する血管内皮機能の早期評価の重要性と、勤務形態に応じた生活習慣介入の可能性を示す成果です。今後は、夜勤頻度や勤務形態の違いをより詳細に評価した縦断研究や介入研究により、夜勤労働者の血管健康を守るための具体的な対策の確立が期待されます。
掲載論文
発表雑誌名
Journal of Hypertension
論文タイトル
Impact of night shift work on vascular function in healthy adult workers
著者
Hiroyasu Murata1, Ai Hirasawa2, Ayumu Sakurai3, Daichi Takano3, Shotaro Saito4, Marina Fukuie5, Rina Suzuki5, Masayoshi Horino6, Shinya Matsushima7, Shigeki Shibata7
著者(日本語表記)
村田裕康1、平澤愛2、櫻井歩夢3、髙野大地3、齋藤祥太郎4、福家真理那5、鈴木里奈5、堀野雅祥6、松嶋真哉7、柴田茂貴5,7* *責任著者
所属
1. 杏林大学保健学部, 2. 杏林大学保健学部健康福祉学科, 3. 杏林大学大学院保健学専攻リハビリテーション科学分野, 4. 東洋大学生命科学部生体医工学科, 5. 杏林大学医学部総合医療学, 6. 杏林大学医学部救急医学, 7. 杏林大学保健学部リハビリテーション学科理学療法学専攻
▼本件に関する問い合わせ先
Tartu Applied Health Sciences University
Physiotherapy and Environmental Health Department
村田 裕康
メール:hiroyasu.murata@tartuh.ee
【リリース発信元】 大学プレスセンター https://www.u-presscenter.jp/











