第9弾 新潟市
西蒲区ってこんな場所!
新潟日報 2022/09/21
新潟日報社が地域の魅力を発信するプロジェクト「未来のチカラ in 新潟市」の一環で、政令市新潟を構成する八つの区にスポットを当てます。8区ではそれぞれ、地域を元気にしようと住民有志やグループが奮闘しています。さまざまな課題の解決の糸口を探り、未来に向けて進もうとする取り組みを紹介します。最終回は西蒲区編。

<西蒲区>
人口/5万4497人(2022年8月末現在)
世帯数/2万866世帯(同)
面積/176.57平方キロメートル
イメージカラー ハーベスト(収穫)イエロー(広大な美しい田園風景が広がり、秋には黄金色の稲穂に包まれる西蒲区を表現)
[概要]
新潟市の南西に位置し、角田山や多宝山、新潟平野、越後七浦海岸など豊かな自然環境に恵まれている。国道116号が南北を、国道460号が東西を結び、JR越後線も通る。巻、西川、潟東、岩室、中之口の旧5町村のエリアから成り、市内8区の中で面積が最も広い。
1713年開湯の岩室温泉は主要な観光資源の一つ。古くから弥彦神社の参拝の拠点で、北国街道の宿場として栄えてきた。岩室は本県の
農業が盛んな地域でもある。広大な平野部での米作りのほか、海岸に近い砂丘地でのゴボウやダイコンといった野菜栽培、角田山麓周辺での柿などの果樹栽培も知られている。伝統ある酒蔵やワイナリーが多いのも特徴だ。
国指定史跡の
インパクト大 岩室温泉「黒湯」シリーズ
泉質PR 新商品好評 感染禍後見据え誘客強化
300年以上の歴史がある新潟市西蒲区の岩室温泉は、温泉街としては新潟市内唯一で、重要な観光資源となっている。この温泉は「黒湯」と呼ばれる。豊富な硫黄と鉄が結合して硫化鉄となり、その黒い微粒子が湯船などに付着する。かかとなどが黒くなることがあるため、温泉客からクレームが寄せられることもあったという。岩室温泉では近年、この黒湯を逆手に取った新たな土産品の開発を進め、魅力発信に努めている。

新型コロナウイルス禍による観光業への影響は深刻で、岩室温泉も例外ではなかった。
新潟県によると、2020年の入り込み客数は約13万3千人で、ウイルス禍前の19年比で4割落ち込んだ。団体客やインバウンド(訪日外国人客)の減少が現在も尾を引いている。
黒湯の「黒」を前面に押し出して、岩室温泉を盛り上げるプロジェクトが始まったのは昨年。旅館やホテル8軒が加盟する岩室温泉旅館組合の
岩室温泉の菓子店などに協力してもらい、試食会を重ねた。そして、昨年11月に黒ごまを使ったゆべしや竹炭入りのまんじゅうやジェラートなど、黒色が存在感を主張する八つの商品の発売にこぎ着けた。
開発した1人である菓子店

黒湯の商品は旅館やホテルのほか、市の観光施設「いわむろや」でも一部を販売しており、好評だという。ことし春には、紫黒米を使った弁当、地元酒蔵の酒かすと竹炭を使用した黒い甘酒、黒ビールなど、新たに4商品を追加発売。「黒湯シリーズ」の強化を図った。
市は、岩室温泉の入り込み客数をウイルス禍以前の水準に戻そうと、首都圏をはじめ、新潟と空路で結ばれている関西や中部圏からの観光客誘致を目指して、誘客イベントや旅行代理店向け商談会に参加し、アピールを強化している。
また、本年度からは、弥彦村と共同で新潟空港とJR新潟駅、佐渡汽船新潟港ターミナルから岩室温泉や弥彦温泉などへの予約制乗り合いタクシーを本格運行。試験運行だった19年度と比べ、4~8月の利用者は1.3倍となった。ウイルス禍収束後に向けて、幸先の良いスタートとなった。
西蒲区産業観光課の担当者は、県外での商談会で黒湯を紹介すると興味を示してもらえると手応えを語り、「強い印象を持ってもらえるのは一つの武器。旅館組合とともに、アピールを一層強化していきたい」と話している。
[こんな地域を目指します]
手を取り合い 歴史守りたい
岩室温泉観光協会副会長・髙島屋女将 髙島基子さん(58)

歴史ある岩室温泉を次の世代につないでいくため、温泉街や地域の菓子店、飲食店など、みんなで残る方法を一つでも考え、地域を盛り上げようという思いで、黒湯シリーズを始めました。
これをきっかけに、商店も元気になったし、私たちも違う業種の方ともつながりが深くなりました。
温泉全体では、県民割の効果もあり、夏休みの繁忙期には宿泊客が戻り、ウイルス禍前の8割ほどまで回復しました。一方で、繁忙期を過ぎると、宿泊客が落ち込み、需要の波が激しいと感じます。
日本人のお客さまとともに、また以前のように、中国やインドネシアなどからのお客さまが戻って来てくれることを期待しています。
岩室は海と山と両方が近いため、食材も豊富で、各旅館の料理は評判が良く、皆さん頑張っています。江戸時代の北国街道の宿場として栄えた歴史があり、お寺や国登録有形文化財の建物をはじめ、古い建物が多く残っています。
こうした特徴を生かし、いろいろな業種の皆さんと一緒に手を取り合いながら、街を巻き込み、歴史を守っていきたいです。
お薦めスポット
<上堰潟公園> 豊かな自然が手招き

角田山の麓にある
春の桜450本と菜の花の競演は有名で、多くの市民の目を楽しませる。現在は10月末まで、区産業観光課が取り組む「わらアートまつり」が開かれており、招き猫と
「野鳥の池」は、冬季、積雪が少なくて餌を取ることができるため、ハクチョウやオオヒシクイなどが飛来することもある。
公園を管理する西蒲区建設課は「自然を楽しみながらゆっくり過ごすことができる公園。多くの市民に親しんでほしい」としている。問い合わせは同課、0256-72-8507。

<中之口先人館> 偉人26人をたたえる

中之口地区には、第36代横綱羽黒山をはじめとした旧中之口村出身の偉人26人を顕彰する「中之口先人館」がある。多くのスペースは、羽黒山の関連資料で占められている。場所優勝の表彰状や引退時の断髪式で切り取られた
羽黒山のほか、東映創設者でプロ野球パ・リーグ会長を務めた大川博の資料も展示。越後平野を長年悩ませた水害を抑えるため、ことし通水100年を迎えた大河津分水の完成に力を注いだ先人も紹介している。
田村勇次館長(62)は「教育や治水などで懸命に汗を流した人々がいたからこそ、今の地域がある。その足跡を知ってほしい」と話している。
入館料は大人200円、高校生100円。月曜(休日の場合は翌日)、休日の翌日は休館。問い合わせは025-375-1112。
