第9弾 新潟市

秋葉区ってこんな場所!

新潟日報 2022/09/07

 新潟日報社が地域の魅力を発信するプロジェクト「未来のチカラ in 新潟市」の一環で、政令市新潟を構成する八つの区にスポットを当てます。8区ではそれぞれ、地域を元気にしようと住民有志やグループが奮闘しています。さまざまな課題の解決の糸口を探り、未来に向けて進もうとする取り組みを紹介します。今回は秋葉区編。

<秋葉区>
人口:7万5456人(2022年7月末現在)
世帯数:3万793世帯(同)
面積:95.38平方キロメートル
イメージカラー:フローラルグリーン(シンボルの「秋葉山」や四季折々の草木、花々など豊かな自然環境に囲まれた秋葉区を表現)

[概要]
新潟市の南東部に位置し、旧新津市と旧小須戸町の地域から成る。北には小阿賀野川、東には阿賀野川、西には信濃川が流れる。南部には、明治時代末期ごろに日本一の石油産出量を支えた秋葉丘陵がある。
JR信越線や磐越西線、国道403号新津バイパスなどが通り、市中心部を含めた周辺地域との交通アクセスがよい。秋葉丘陵にある秋葉公園や県立植物園、新津美術館のほか、かつての石油産業の隆盛を知ることができる「石油の世界館」がある。
長らく鉄道交通の要衝として栄えたことから「鉄道のまち」とも呼ばれる。蒸気機関車や新幹線先頭車両が展示されている「新津鉄道資料館」が、鉄道ファンの人気を集めている。
また、小合地区で1919年に日本で初めてチューリップの球根の商業栽培に成功したとされることから、 花卉 かき 園芸生産が盛んとなっている。

子育て環境 充実に力
里山の魅力発信、移住定住進む NPO運営預かり、相談も

 秋葉区は秋葉丘陵の里山をはじめとした豊かな自然が特徴で、鉄道や国道による交通アクセスがよい。新潟市中心部のベッドタウンとして人気がある。

 この利点を生かして区は2016年度から、里山の魅力を発信して移住定住を推進し、人口の増加につなげる「アキハスムプロジェクト」を展開。ただ、ウイルス禍で、オンライン相談会など、区の魅力を移住希望者に紹介する活動にとどまっている。

 ウイルス禍前には、首都圏の住民対象のツアーを実施し、これをきっかけに移住した市民もいる。区内ではこのプロジェクトと並行して、小須戸と金津里山の両地区が、引っ越し費用や住宅取得費の一部補助が受けられるモデル地区に選定された。区によると、17~21年度の5年間で、小須戸地区に45世帯、金津里山地区には5世帯が移り住んだ。

 区では8月上旬、移住者を対象に座談会を開き、地域コミュニティーや子育て支援について感じたことなどを聞き取った。区では今後も移住者と双方向に情報交換し、移住促進策の充実を目指したい考えだ。

 移住促進策の課題は、区自治協議会などが、21年度に行った区民向け意識調査でも浮かび上がっている。子育てや教育関連の施設や相談体制が整っているかとの質問に対し、「思う」「まあ思う」の肯定的な回答が計35%にとどまった。

 調査結果を受け、区地域総務課は「今後のまちづくりに生かしていく。民間団体などと連携し、移住者への情報提供やサポート体制づくりを進めたい」とする。自治協会長の金子洋二さん(54)は「子育てする人や移住者同士のつながりをつくるとともに、自発的に活動する人たちを支え、子育て環境を改善していくことが重要だ」と指摘する。

移住者の声をまちづくりに生かすため市が開いた座談会=新潟市秋葉区新栄町

 地元住民と移住者が協力して子育て支援に動き出した例がある。秋葉区を中心に活動するNPO法人はぐハグは、同区在住の短大教員小口彩さん(42)が代表理事を務める。東京出身で区内に暮らす保育士原知恵子さん(44)と知り合い、20年に設立した。

 「買い物の間などに子どもを一時的に預けられる場所や、子どもを連れて仕事ができるスペースがあるといい」。原さんは移住後、地域で子育て世代を後押しする場や組織の必要性を感じていた。

 同法人のメンバーは10人。温泉施設や公共施設を借りて、専門スタッフによる、無料の乳幼児の一時預かりや子育て相談の活動を行っている。8月下旬には、新津健康センターで、子どもの遊び場「HUG(はぐ)ひろば」と銘打った「移動式児童館」の取り組みを始めた。秋葉区は市内で唯一、児童館がないため、既存の施設を活用。今後は同センターなどで、月1回程度の開催を予定している。

 小口さんは「子育てについての悩みなど気軽に相談に来てもらって、親と子が安心して過ごせる場所にしていきたい」と話している。

NPO法人はぐハグが初めて企画した「移動式児童館」で木工を楽しむ子どもたち=新潟市秋葉区程島

[こんな地域を目指します]
保護者に寄り添い支援
NPO法人はぐハグ代表理事 小口彩さん(42)

「保護者の声を受け止めて、行政などにつなげる役割を担いたい」と語る小口彩さん

 子どもと保護者が孤立したり、孤独を感じたりせず、あたたかく抱きしめられるような社会にしたいと、子育て支援の活動をしています。

 主な活動の一つ「パパママ銭湯」では、日帰り温泉施設で、スタッフが子どもを預かる間、保護者はゆっくりとお風呂に入ったり、ご飯を食べたりすることができます。子育てする人たちに自分をケアする時間と場所を確保してもらうよう支援することが必要です。

 NPO法人を設立したのは、自身の子育て経験からです。仕事をしながら、2歳から7歳の3人を育てています。自分は母が近くにおり、サポートを受けられました。でも、移住者などで、身近に頼れる人がいないという人もいます。そうした人を支えたいと思いました。

 短時間だけ働く間に子どもを預けられる場所や、学童保育の終了後に親が仕事から帰宅するまでの間、子どもたちが過ごせる遊び場など、多様性に対応できる支援があるといいですね。

 秋葉区は地域自治の力が強く、年配の世代の人たちも若い世代を見守り応援してくれます。当事者たちが必要なものをつくり続けられる自由な雰囲気が、大切にされる地域であってほしいと思います。

お薦めスポット

<うららこすど> 新鮮な野菜ずらり

 田園が広がる南西部の小須戸地区に農業交流拠点「うららこすど」がある。農産物直売所には地域の農家が収穫したばかりの新鮮な野菜や旬の果物がずらりと並ぶ。

 これからの季節は大根やハクサイ、キャベツ、梨やブドウ、柿などがそろう。午前9時に開店すると、買い物客が次々に訪れ、早々に売り切れる商品もある。

旬の地場野菜が並ぶうららこすどの農産物直売所=新潟市秋葉区小須戸

 直売所には「加工部」があり、地元名産のボケの実を使ったジャムや切り干し大根などを販売する。直売所で売れ残った野菜なども加工品にし、食材を有効活用しているという。

 事務局長の白井晃さん(75)は「特に笹団子は『おいしい』と評判で、全国にも発送している」と教えてくれた。

 市民農園や、四季折々の花木などを展示販売する花ステーション、休憩施設の花とみどり館もある。

 年末年始を除き無休。午前9時~午後5時30分。問い合わせはうららこすど、0250-38-5430。

<古津八幡山遺跡> 古代ロマンを体感

 南部の秋葉丘陵には古代ロマンを感じさせる約2千年前の遺跡がある。国指定史跡の 古津八幡山 ふるつはちまんやま 遺跡だ。

 同遺跡は1987年に発見された。弥生時代後期の高地性 環濠 かんごう 集落で、約60棟の竪穴住居跡などが見つかっており、7棟の建物が復元されている(一部は修復工事中)。県内最大級の古墳もある。

 約12ヘクタールが史跡に指定され、指定地外では今も発掘調査が行われている。四季折々の植物のほか、越後平野、弥彦山、角田山の眺めも楽しめる。

復元された弥生時代の竪穴住居がある古津八幡山遺跡=新潟市秋葉区古津

 新潟市文化財センターの相田 泰臣 やすおみ さん(46)は「出土遺物などから、昔から交通の重要な場所だったことがうかがえる。当時に思いをはせ、景色を体感してほしい」と話す。

 ガイダンス施設の「史跡古津八幡山 弥生の丘展示館」では、土器などを展示するほか、土笛づくりといった体験もできる。

 展示館は入場無料。午前10時~午後5時。月曜(祝日の場合は翌日)、祝日の翌日は休館。展示替えのため9月12日まで休館。問い合わせは同館、0250-21-4133。