第9弾 新潟市
西区ってこんな場所!
新潟日報 2022/09/21
新潟日報社が地域の魅力を発信するプロジェクト「未来のチカラ in 新潟市」の一環で、政令市新潟を構成する八つの区にスポットを当てます。8区ではそれぞれ、地域を元気にしようと住民有志やグループが奮闘しています。さまざまな課題の解決の糸口を探り、未来に向けて進もうとする取り組みを紹介します。今回は西区編。

<西区>
人口/15万5059人(2022年8月末現在)
世帯数/7万379世帯(同)
面積/94平方キロメートル
イメージカラー/サンセットオレンジ(人々が「夕日」に集い、にぎわう様子と、活力を感じさせる西区を表現)
[概要]
西区は、新潟市の中で信濃川と関屋分水路より西に位置し、旧新潟市の坂井輪、黒埼、西の各地区を中心に構成される。
区内は鉄道や幹線道路沿いを中心に住宅地が形成され、南側一体には農地が広がる。水辺が豊富で、ラムサール条約湿地の佐潟は、渡り鳥の飛来地にもなっている。海に沈む夕日も有名で、毎年開かれる「夕日コンサート」(新型コロナウイルスで2020年から3年連続中止)には県内外から多くの観客が訪れる。
名産は黒埼茶豆や、いもジェンヌなど。名産にちなんだ「くろさき茶豆大橋」は、2023年春、利用開始予定になっている。
学生と地域 広がる輪
薄れる人付き合い築き直しへ 農家と協力、野菜市■災害時の情報共有
新潟市西区は市内8区の中でも2番目に人口が多い。区内には四つの大学があり、定員の合計で単純に比較すると、学生の数は約1万4千人と、区の人口の1割を占める。しかし、多くの学生は自宅と大学、アルバイト先などの行き来が中心で、地域との関わりはそれほど多くない。住民に目を向けても新興住宅が多いことから「隣の家の人が分からない」「地域交流がない」といった、人付き合いの希薄さが課題でもある。そんな中、新潟国際情報大学周辺のみずき野地区、赤塚地区では、学生が地域に入ることで住民との新たなつながりが生まれている。
同大学・経営情報学部の小宮山智志准教授のゼミは、社会において他者の視点を学ぶ一環で、学生が地域に出向き、課題を解決する活動を重視している。地域の祭りに参加したり、野菜市などのイベントを開催したりと、地域密着型の取り組みを展開している。
その一つが、食品スーパーのないみずき野地区に安くて新鮮な野菜を届けようと、8月初旬に初めて開催した「ハネモノ野菜市」だ。授業でフードロスについて学んだ学生が、地元農家でも野菜の廃棄に頭を悩ませていると知り、発案した。4月から準備を始め、2軒の農家の協力を取り付けた。

当日の朝、学生が農家に出向いて野菜を受け取り、会場で新鮮だが少しふぞろいなナスやピーマンなどを並べた。訪れた買い物客は「こんなに安くていいの」と驚きつつも、うれしそうに野菜を抱えていた。
ハネモノ市に野菜を提供した西区藤蔵新田の農家、原田亮さん(43)は「近年、お隣さんと関わる人が少なくなった。生産者としても食品ロスを減らし、地域のためにもなる活動はうれしい」と笑顔だった。

地域のイベントに関わる中で、小宮山准教授と一部の地元住民らが無料通信アプリLINE(ライン)で連絡を取り合うようになった。そのつながりが思わぬ場面で生かされた。
2021年1月、みずき野地区で大雪による停電が発生。被害の全容が見えない中、ラインのグループでは「ここは停電してます」「ストーブ、貸し出せます」と、身近なエリアの被害状況がタイムリーに共有され、支え合いが生まれた。
小宮山准教授は「地域のつながりは命を守ることになると実感した」と振り返る。そして次の展望を語る。もし平日の日中に災害が起きたら-。「みずき野には企業が少なく、働く世代は不在。残っているのは子ども、高齢者、大学生が中心だ。この人たちをつなぐ仕組みをつくりたい。情報大学の使命でもある」
早速「みずき野ワクワク掲示板」と題したライングループを開設した。まだ10人ほどしか登録していないが、ゼミ活動のイベントなどを通し、登録者数を増やしたいと考えている。
2000年から自身もみずき野に暮らす小宮山准教授は「みずき野から世界を変えたい。食べ物がおいしくて水がきれいな新潟は、もっと人が集まる場所にできるはずだ」と地域発展への貢献を意気込んでいる。
[こんな地域を目指します]
人の思いを大切に
鈴木千裕さん(20歳)新潟国際情報大学3年

大学があるみずき野地区で開催した「ハネモノ野菜市」では、農家との調整などを担当しました。授業でフードロスを学び、大学周辺の農家でも、形が悪いとの理由で廃棄が多く出ていると気付きました。農家からは「食べ物を捨てなくても済む」と、お客さんからは「安くて新鮮」と、双方から喜ばれました。人の思いを大切にして活動することは、いつか利益を生むと信じています。
催しの企画を考えることは楽しいですが、限界を感じる時もあります。でも、ひらめきが1人1%なら100人集まれば100%。今後も大学の友人や地域の人と協力し、知恵を絞り、活動に励みたいです。
西蒲区出身です。大学入学当初は、県外に就職して視野を広げたいと思っていました。しかし、地域の人と関わるうちに、県内での就職を目指すようになりました。地域と学生がもっとつながれば、魅力に気付き、地元にとどまる学生が増えるのではないかと思います。
お薦めスポット
<新川西川立体交差> 治水の歴史を物語る

新川の上に架かる水路橋を西川が流れ、二つの川が交差する不思議な光景と、川を切り開いた先人の知恵と歴史を感じる「新川西川立体交差」。新川は200年前に延べ約165万人の農民らが関わり、建設したといわれる。新川の完成は西蒲原地域を水害から救い、治水によって水田地帯としての発展をもたらした。
立体交差のPRなどを行う「越後新川まちおこしの会」は、立体交差の構図や歴史を説明するパネル資料などを周辺に設置。川を眺めながら、歴史を学べるようにしている。さながら「まるごと博物館」だ。同会の加藤功さん(76)は「周囲にたくさん仕掛けを作っています。ぜひ散歩しながら楽しんでほしい」と笑顔だ。
問い合わせ:加藤さん 090-4701-3910
<藤月堂> 体に優しいお菓子を

創業150年以上、大野町の和洋生菓子店「藤月堂」では、西区名産の黒埼茶豆を使用した「茶豆どらやき」がお薦めだ。ふわふわとした生地に挟まれた、さわやかな緑のあん。黒埼茶豆をふっくらと炊き上げ、枝豆の優しい甘さが口に広がる。
藤月堂のお菓子は全て手作り。「体に優しいお菓子」を目指し、旬の材料や作り方にこだわる。和菓子以外にチーズマドレーヌなどの多様な洋菓子も楽しめ、かつては天皇に献上されたこともあったという。
5代目パティシエの佐藤
問い合わせ: 025-377-2005
<見晴らしの丘展望台> 県境の山々まで一望

360度の大パノラマが広がる見晴らしの丘展望台は、県内はもちろん、県境の山までも見渡せる西区の絶景スポット。2019年に赤塚地区の地元住民が階段やベンチなどを整備し、完成した。西区の砂丘農地から海に浮かぶ佐渡まで、新潟ならではの景観を、遠近感を味わいながら楽しめる場所になっている。
事務局を担う新潟砂丘遊々会の太田和宏さん(38)は、手作りの展望案内板を佐渡や佐潟、村上方面の3カ所に設置。温かみのある風景画に山や建物の名前を丁寧に記している。太田さんは「季節や時間、天気によって多様な風景が見え、旅行気分も味わえる」とPRした。
問い合わせ:新潟砂丘遊々会 niigatasakyu_youyou@yahoo.co.jp