第9弾 新潟市
江南区ってこんな場所!
新潟日報 2022/08/31
新潟日報社が地域の魅力を発信するプロジェクト「未来のチカラin新潟市」の一環で、政令市新潟を構成する八つの区にスポットを当てます。8区ではそれぞれ、地域を元気にしようと住民有志やグループが奮闘しています。さまざまな課題の解決の糸口を探り、未来に向けて進もうとする取り組みを紹介します。今回は江南区編。

<江南区>
人口/6万8183(2022年7月末現在)
世帯数/2万8094世帯(同)
面積/75.42平方キロメートル
イメージカラー/スプリンググリーン(亀田郷に実りをもたらした先人を受け継ぎ、まちをつくる区民の姿を若い稲や木々の新緑で表現)
[概要]
江南区は新潟市のほぼ中心に位置し、西蒲区以外の6区、阿賀野市と接している。旧亀田町、横越町や曽野木、両川、大江山の計5地区で構成。交通の利便性が高く、大型商業施設や工業団地が立地する。
土地は海抜ゼロメートル地帯が多く、かつては「地図にない湖」と呼ばれるほど浸水被害が多かった。河川改修や土地改良によって、現在は豊かな田園地帯へと生まれ変わった。
伝統織物「亀田
皆が輝く共生社会へ
特別支援学校生徒に活動の場 アート、スポーツ 卒業後も
江南区のJR亀田駅東口は福祉施設が集積し、「福祉ゾーン」と呼ばれる。旧亀田町時代の1997年、県が障害者の活動拠点施設「新潟ふれ愛プラザ」を開設し、町も特別養護老人ホームなどを集中的に整備した。政令市移行後も、グループホームなどが開所しているほか、区も福祉ゾーンを核とし、イベントを開くなどして障害者と健常者の共生社会を目指している。
「ナイスプレー」。8月中旬、福祉ゾーン内にある県立江南高等特別支援学校の体育館に元気な声が響いた。この日フロアホッケーに参加した約20人は同校の生徒や卒業生、保護者たち。こうした場をつくっているのは認定NPO法人「新潟ユニバーサルスポーツ・文化推進協会」(同区亀田向陽3)だ。

活動を率いる田中明美理事長(58)と新井景子副理事長(53)の子どもは同校の卒業生。同校に部活動がなく、「バスケやアートなど好きな活動をさせてあげたい」と田中さんが声をかけ、2011年、保護者で運営する放課後活動クラブ「KAAC(カーク)」を始めた。
ただ、卒業すると活動が途絶えてしまうのが課題で、就職後の悩みなどを気軽に相談できるような場所もなかった。そこで、NPO法人を設立し、18年、福祉ゾーンのマンション1階に、地域活動支援センター「1UP(ワンナップ)」を開設。約90平方メートルの部屋を借り、クラウドファンディングで310万円を集めて整備した。生徒や卒業生ら約110人が登録し、アート制作やダンスなど思い思いの活動に励み、地域との交流も行う。
8月上旬、ワンナップの利用者が集まり、中央区の文化施設で、アート制作の日帰り合宿を実施した。江南区の作家が指導し、「平和と幸せ」をテーマに花火や虹、大好きな先生の顔などを真剣な表情で描いていた。卒業生の男性(19)は、普段はドラッグストアに勤務する。「仕事は大変だけど、卒業しても絵を描く楽しみがあってうれしい。それに仲間と会えるから」と目を輝かせた。

来月には、10月の発表に向けて、ダンスメンバーと新潟明訓高校ダンス部との練習が始まる。ほかにも、鉄道愛好会やヨガなど活動は増え続けている。
市の補助金と会費、寄付での運営はぎりぎりだが、田中さんと新井さんは「子どもたちに社会の中で生きていけるんだっていう経験をさせたいし、生き生きとした姿を周りに知ってほしい」と口をそろえる。田中さんは「やりたいことが多すぎて、もっと思う存分に活動できる場所が欲しい。言葉にしないと夢はかなわないから」とさらなる意欲を見せた。
[こんな地域を目指します]
交流通じ理解広げたい
新潟ユニバーサルスポーツ・文化推進協会理事長 田中明美さん(58)

ユニバーサルスポーツの理念である障害の有無にかかわらず、誰もが一緒に楽しく活動し、笑顔になれるような温かい地域にしたい。そのために、障害のある人と接してもらい、障害を知ってほしいです。
発達障害の息子が子どもの頃、トラブルばかりで習い事が続きませんでした。ある絵画教室と出合い、失敗を「大丈夫だよ」って認めてもらえ、息子にも居場所があると気付きました。一方、特別支援学級の支援員だった時は通常学級の生徒と壁を感じることがあり、現在は、障害者雇用で仕事に就いた卒業生が職場で特性を理解してもらえず、悩んで辞めてしまった話を聞くこともあります。
障害のある人が生き生きと自分を表現できるよう、交流を通して理解を広げたい。ワンナップを設立し、幅広い層と交流できていると実感しています。「変わってる」とか「怖い」とか思われがちだけど、壁を越えるために、普段関わらない人も一歩踏み出してもらえたらうれしいです。
お薦めスポット
<阿賀野川フラワーライン> 川を眺め風を切る
ゆったりと流れる川に沿ってペダルをこぐ。すがすがしい気持ちにさせてくれるのが横越地区の阿賀野川左岸にあるサイクリングロード「阿賀野川フラワーライン」だ。

コースは上流(沢海)-下流(小杉)の全長約6キロで、駐車場は4カ所に計170台。上流側レクリエーションゾーンのかま場5基は、予約不要でバーベキュー、日帰りキャンプを楽しめる。休日はくつろぐカップルや、サイクリングや遊具を楽しむ親子連れが訪れていた。横越小3年の女の子(9)は「広いし、川が見えてきれい。自転車に乗って風を受けると気持ちいい」と笑顔だった。
問い合わせは区建設課、025-382-4762。

<市中央卸売市場> 朝から「寿司ラー」
サケやサバ、イカ…。さまざまな魚介類が並び、午前5時から競りが行われる新潟市中央卸売市場。場内にある七つの飲食店では、市場直送の鮮魚を盛り付けた海鮮丼などを堪能できる。仲卸業者らの胃袋を満たし、一般客は午前8時から利用可能だ。
その一つ、「ことぶき
飲食店全般の問い合わせは同市場管理事務所、025-257-6767。

<ジェラート&カフェ YOSHIDA> 地産地消自然の味
先月オープンした「ジェラート&カフェYOSHIDA」(丸山ノ内善之丞組)では、地産地消など材料にこだわったジェラートを提供している。

季節の旬の食材を使用し、常時18種類をそろえる。県産では区内の枝豆で作った、粒々感とミルクがマッチした「ずんだ」や、桃をたっぷり使ったジェラートが並ぶ。他に定番のミルクやイタリア産ピスタチオ、ピーナツバターが人気だ。
店長の加藤良子さん(48)は「秋は県産の日本ナシやイチジクを出したい。農家の方が一生懸命作ってくれた素材そのものの味を楽しんで」と呼びかけている。カップかコーンで提供し、値段は390円から。無休。問い合わせは、025-250-7355。
