第9弾 新潟市
中央区ってこんな場所!
新潟日報 2022/08/24
新潟日報社が地域の魅力を発信するプロジェクト「未来のチカラin新潟市」の一環で、政令市新潟を構成する八つの区にスポットを当てます。8区ではそれぞれ、地域を元気にしようと住民有志やグループが奮闘しています。さまざまな課題の解決の糸口を探り、未来に向けて進もうとする取り組みを紹介します。今回は中央区編。

<中央区>
人口/17万3530人(2022年7月末現在)
世帯数/8万8981世帯(同)
面積/37.75平方キロメートル
イメージカラー/ウォーターフロントブルー(日本海や信濃川などの水辺に恵まれ、湊町の伝統文化を感じる街並みもある中央区を表現)
[概要]
中央区は万代や古町などの繁華街を擁し、住宅街やマンションも各地に広がる。市役所や県庁をはじめ行政機能が集中。再開発が進むJR新潟駅、全国有数の交通量の新潟バイパスを抱える交通の要でもある。
一方で日本海や鳥屋野潟があり、中心部を信濃川が貫く「水辺のまち」の一面も。かつては北前船の寄港地として栄え、開港5港の一つにもなった。国の重要文化財の萬代橋や旧新潟税関庁舎など、街並みには歴史の名残が色濃い。
湊町の空き家 新たな一歩
少子高齢化が進む下町 福祉利用、菜園で華やかに
新潟市で最も多くの人が住む中央区にも、人口減少の波は押し寄せている。中でも新潟島の信濃川河口に近い
下町の東湊町通3にある築40年ほどの空き家は今年、知的・精神障害者が暮らすグループホーム「アルメール東湊町」としてリニューアルされた。階段に手すりが付き、トイレは温水洗浄便座に、古い畳には補修を施した。6月から利用されている。
民間企業のカルモ(中央区)が運営する。3階建てで定員5人。現在は3人が入居する。サービス管理責任者の女性(35)は「部屋数が多く、壁を抜くなどの大きな改装はせずに使っている。良い物件だった」と振り返る。
リフォームには、空き家を福祉活動に活用すると市から補助金を受けられる制度を使った。当初は賃貸物件も含めて検討していたが、行政支援が空き家の活用を後押しした形だ。
グループホームへの転換例は注目を集め、7月には新潟大創生学部1年の学生グループが授業で視察に訪れた。学生の一人(19)は「空き家活用で障害者や高齢者、一人親といった要配慮者に住宅提供が進み、暮らしやすい新潟になってほしい」と期待した。
同社は昨年、近くの中央区雪町で空き家を改装したグループホームを開設しており、東湊町は2カ所目。ともに近隣との関係は問題なく、雪町では「空き家に人が入って安心した」との声も寄せられたという。

総務省の住宅・土地統計調査(2018年)によると、賃貸用などを除く空き家が住宅総数に占める割合は中央区で5.6%。新潟市全体(5.0%)を上回る。
空き家は放置されると、壁が崩れるなど周囲に被害を与えかねない。建物が密集する下町などは特に危険度が高く、「道が狭くて解体もしづらい」(市住環境政策課)状況だ。
下町では複数世帯が入る長屋の空き家もある。それを解体し、跡地で市民が野菜や花を育てる場所が本町通12にある。本町12自治会が所有者全員の同意を得て14年度に菜園にした。取り壊しや整備に市が約170万円の補助を出した。
自治会長の秋山智恵子さん(55)は「菜園は華やか。雑草も生えなくていい」と利点を挙げる。調整役として関わった県宅地建物取引業協会(中央区)は「所有者が1人でも反対したら実現しなかった」とし、菜園への転換は県内でもあまりない事例とみる。
ただ、人口減少が進む中、下町だけでなく中央区や市全体としても「いずれは空き家の多い『過疎地』が点在するようになる」と協会の担当者は言う。
秋山さんは「空き家を倉庫代わりにしている所有者も多い。市は補助制度をもっとアピールし、空き家を手放さないと損と思うような施策も進めてほしい」と望んでいる。

[こんな地域を目指します]
楽しく住みたいと思える
本町12自治会長 秋山智恵子さん(55)
本町通12には母の実家の海産物店があり、十数年前から住んでいます。長年務めていた前の自治会長が辞めることになり、2020年に手を挙げました。
この地域にはフレッシュ本町という商店街があります。昔はたくさんのお店があり、露店も何十店と並びました。今は高齢の住民が多く、店も少なくなりました。でも最近、市内外のグルメなどの出店に商店街の店も楽しめるイベント「ヤムヤムマーケット」を自治会主催で開いています。
5月にも本町12と近くの旧小澤家住宅を会場にして多くの人が来場しました。地域のお年寄りが何度も家を出てきてくれました。人がたくさんで、うれしかったんでしょうね。
この町は楽しいことがある。そう感じられるようにしたいです。そして若い人でなくても、ここに住んで地域に関わりたいという人が多くなってほしい。住居として空き家をもっと活用するために、市の力も必要だと思っています。

お薦めスポット
<真保餅屋> 多彩かき氷が人気
まだまだ残暑が続く。湊町風情とともに涼を感じられるスポットを巡りたい。まずは歴史ある下町で創業100年以上を誇る老舗の真保餅屋(本町通12)。2年前に新登場したかき氷が世代を問わず人気だ。

メロンやブルーハワイといった定番シロップに、イチゴ果肉やチョコチップなどトッピングが多数。買ってすぐ店先で味わえる。
お薦めは抹茶シロップやミルク、白玉に自家製の粒あんがたっぷりのかき氷(550円)。3代目店主の真保隆さん(55)は「いろんな味が一体になった一品をぜひ食べに来て」と笑顔を見せる。
午前7時~午後6時半ごろ(水曜定休)。問い合わせは025-222-9638。

<信濃川ウォーターシャトル> 川風浴び心地よく
真保餅屋を後にして徒歩15分ほど。信濃川河口に近い新潟市歴史博物館みなとぴあの脇に、信濃川ウォーターシャトルの乗り場がある。

西区のふるさと村まで往復できる。風が心地よく、水上から見る萬代橋は圧巻だ。ウミネコの餌やりに子どもは大興奮。夕方には朱鷺メッセ発着で昭和大橋を超えてから戻る周遊便もあり、船長の栗原弘樹さん(30)は「夕景がきれいです」とアピールする。
定期運航は11月27日までの土日祝日。みなとぴあから万代シテイまで500円、県庁前まで800円、ふるさと村まで1200円(小学生は各半額)。平日は予約制。問い合わせは025-227-5200。

<県庁の森> 都市部に貴重な緑
ウォーターシャトルに揺られること約30分。県庁前で下船して少し歩くと、「県庁の森」が広がる。周辺は官庁や住宅、店舗などが多く、貴重な緑地として親しまれている。

約1万5千平方メートルに2400本の木が植えられている。夏はセミの声が耳をつんざくが、森の中は日差しが遮られて涼しい。紅一点のごとく、サルスベリがピンクの花を咲かせていた。
春は雪割草、秋は彼岸花や紅葉と四季折々に見どころがある。県管財課は「休日でも平日でも気軽に来てほしい」と話している。 問い合わせは同課、025-280-5065。
