第9弾 新潟市
北区ってこんな場所!
新潟日報 2022/08/10
新潟日報社が地域の魅力を発信するプロジェクト「未来のチカラin新潟市」の一環で、政令市新潟を構成する八つの区にスポットを当てます。8区ではそれぞれ、地域を元気にしようと住民有志やグループが奮闘しています。農業、公共交通…など課題もさまざま。解決の糸口を探り、未来に向け進もうとする取り組みを紹介します。お薦めスポットと合わせてどうぞ。初回は北区編です。

人口/72,073人(2022年7月末現在)
世帯数/29,744世帯(同)
面積/107.92平方キロメートル
イメージカラー/ネイチャーグリーン(田園風景や福島潟のオニバス、松林など豊かな自然に恵まれた北区を表現)
[概要]
北区は新潟市の北東部、阿賀野川下流の右岸に位置する。平成の大合併により、豊栄市が新潟市に編入合併され、2007年に政令指定都市「新潟市」の誕生とともに現在の北区となった。
田園風景、高森の大ケヤキなど、豊かな緑に囲まれ、福島潟、十二潟などの潟や、太夫浜、島見浜などの海岸といった自然、水源にも恵まれている。
県内有数の出荷量を誇るトマトや「やきなす」が並ぶ葛塚市、松浜漁港でとれたシジミや鮮魚が手に入る松浜市は多くの人でにぎわう。
米を中心に野菜、果樹、花きの生産や、畜産、漁業が盛んで、地域ブランド商品の開発、販売に向けた取り組みに力を入れている。
スマート農業新たな一歩
トマト「桃太郎」抜群の知名度 勘と経験 データで効率化
稲作をはじめ、砂丘園芸やハウス園芸などが盛んな北区。特にトマト、ナスは県内有数の出荷量を誇り、トマト「桃太郎」は抜群の知名度を誇る。
7月中旬、同区村新田の農家、川崎保夫さん(74)は、トマトハウスに自動で水やりや施肥を行う機械を新たに設置した。情報通信技術(ICT)を活用し、農家の負担を減らす「スマート農業」だ。「これであと10年は農業を続けられるかな」。水と肥料をかき混ぜて養液を作りながら、笑顔で話した。

トマトを作り続けて20年。若い頃は体力で乗り越えられた農作業も、年を重ねるごとに体にこたえるようになった。でも、システムの導入により、ボタン一つでハウス内のトマト全体に養液を送ることができる。
「スマート農業なら、高齢の農家や新規就農を目指す人たちの負担を減らすことができる。農業に携わる人を増やす可能性がある」と期待を寄せる。
農家の高齢化、後継者不足、労働力の確保…。北区にとっても大きな課題だ。
北区特産物研究協議会がトマト生産者65人に対し、2019年度に行った調査によると、66.2%が「後継者がいない」と回答した。また労働力確保の難しさを課題に挙げる生産者も目立った。
その一方で、労働力の軽減に向け「スマート農業に積極的に取り組みたい」と考えている人は1割未満にとどまった。
だからこそ川崎さんは力を込める。「私みたいに70歳を超えてもスマート農業ができることを示せれば、他の農家の人たちも新たな一歩を踏み出せるかもしれない」
■ ■
北区には、スマート農業の将来性に注目するベンチャー企業がある。2016年設立の農業法人ベジ・アビオ(NSGグループ)。新潟の寒い冬でも安定しておいしいトマトが作れるように、スマート農業に力を入れている。
社長を務めるのは山﨑
スマートフォンを取り出しては画面をチェックする。ハウス内の温度、湿度、日射量、二酸化炭素濃度…。「どこにいてもこれ1台で全てチェックできるんです」と話す。

それらのデータをクラウド上に蓄積し、栽培環境を監視、分析することで最適な生育状況を保つことができるという。また冬の日照量不足を補おうと、生育を促す発光ダイオード(LED)をハウス内に試験設置するなど、ICTを駆使する。
山﨑さんは「農業は『勘と経験』と言われていたが、データに置き換えることで、安定的に生産し、作業を効率化することができる」と強調。ICT化を進めることで、休日も取りやすくなったという。
地域の宝である農業の衰退を危惧する山﨑さん。「若い人に関心を持ってもらいたい。農業の楽しさ、何より北区のトマトのおいしさをもっと広めたい」。とびっきりの笑顔を見せた。
[こんな地域を目指します]就農者増やし、持続可能に
ベジ・アビオ社長 山﨑瑶樹さん(27)
経営者を志してNSGグループに入社し、2022年2月にベジ・アビオの社長に就任しました。
農業を始めてみると、楽しくやりがいのある仕事だと実感しました。農業は大変そうだと敬遠する人も多いですが、今はスマホ一つで品質管理ができます。
ICT化を進めて事業基盤を確立させ、ノウハウを多くの人に伝えることで北区の就農者を増やしたいと考えています。目指すのは持続可能な農業です。
今は交流サイト(SNS)で新たな取り組みや自社のトマトの情報発信をして、知名度向上に力を入れています。私自身、北区でトマト作りを始めたばかりなので、SNSを通して地域の皆さんとのつながりをつくっています。
若い就農者も増えているので、地域の皆さんと協力して、もっと北区の農業を盛り上げていきたいと思っています。

お薦めスポット
五感使って楽しめる 海辺の森
海を眺め、鳥のさえずりを聞き、生き物に触れる-。五感を使って楽しめるのが北区島見町の「海辺の森」だ。
島見浜に面した約120ヘクタールの森は、キャンプ場やランニングコースを備え、食材や調理器具を持参せずにバーベキューを楽しめる「手ぶらでバーベキュー」も人気だ。
夏の間は「カブトムシハウス」も開いている。100平方メートルの広さのハウスには約600匹がおり、間近でカブトムシの「相撲」などを見られる。
森を管理する同区のNPO法人「森の会」の落合誠さん(70)が、森林の生き物や植物を紹介するネーチャーガイドを務め、木の枝などを使ったクラフト作り教室なども行っている。落合さんは「珍しい生き物が見られる『秘密の森』であり、ウイルス禍でも密を気にせず過ごせる『非密の森』でもある。ぜひ遊びに来て」とPRした。
問い合わせ:海辺の森 025-255-3810

落ち着くひとときを 豊栄図書館
ガラス張りの館内は柔らかな自然光が差し込み、落ち着いたひとときを過ごせる。円形と方形を組み合わせた造りが特徴の市立豊栄図書館。吹き抜けの空間に置かれた大きな丸いテーブルが存在感を放っている。
国際的な建築家、安藤忠雄さんによる設計で、2000年に完成した。コンセプトは「暮らしに根付いた、市民と共に成長する図書館」。本を借りて読むだけでなく、人と人が出会う場所であってほしいとの思いが込められている。
年間12万人が訪れる図書館には、蔵書は約19万冊、AV資料は約5,000点が収められている。閲覧席は全218席。畳で新聞や雑誌を広げられるくつろぎのコーナー、テラスで本が読める屋外読書コーナーなど、気分を変えて読書を楽しむことができる。長谷川豊館長(60)は「回遊性のある館内で多くの書物に触れられるはず。必ずお気に入りの一冊に会える」と話した。
午前10時~午後7時(日・祝日は午後5時)。金曜、第1水曜、年末年始、蔵書点検日休館。
問い合わせ:豊栄図書館 025-387-1123
