第9弾 新潟市
南区ってこんな場所!
新潟日報 2022/09/14
新潟日報社が地域の魅力を発信するプロジェクト「未来のチカラ in 新潟市」の一環で、政令市新潟を構成する八つの区にスポットを当てます。8区ではそれぞれ、地域を元気にしようと住民有志やグループが奮闘しています。さまざまな課題の解決の糸口を探り、未来に向けて進もうとする取り組みを紹介します。

<南区>
人口/4万3300人(2022年8月末現在)
世帯数/1万6555世帯(同)
面積/100.91平方キロメートル
イメージカラー/ブリーズ(そよ風)ブルー(澄み渡る空、自然の大地や川を吹きわたる爽やかな風、天高く舞い上がる凧をイメージ)
[概要]
新潟市の南西部に位置し、旧白根市と旧味方村、旧月潟村の地域からなっている。東側には信濃川、中央には中ノ口川が流れる。交通アクセスを支えるのは区を縦断する国道8号。2019年3月には白根バイパスが全通して利便性が向上し、旧白根市街の渋滞緩和につながった。
特産品は数多い。滑らかな食感と
毎年6月には、中ノ口川を挟んで「白根大凧合戦」が開催される。300年の歴史を誇る県無形民俗文化財で、大凧が空を舞い綱を絡めて引き合う様子は勇壮そのもの。全国から多くの観衆を呼び込んでいる。
ニーズに応え買い物支援
少子高齢化の移動手段模索 創生会議で将来像を議論
南区は多くのエリアに田畑が広がり、新潟市が掲げる「田園型政令指定都市」の個性を創出する地域となっている。面積は西蒲区と北区に次いで広い。しかし、区内を通っていた新潟交通電車線が1999年に全線廃止されて以降、公共交通機関はバスのみとなった。
新潟交通の路線バスは市中心部や近隣のJR駅がある地域へ延びるほか、区バスは7ルートが通る。区バスは2021年度に約3万人が利用したが、5ルートで市が目標とする収支率30%に届いていない。少子高齢化と人口減少により、今後のバス利用の増加や路線拡充は見込めない。南区では公共交通が拾いきれないニーズに対応するべく、模索が始まっている。
南区南東部に位置する小林地区の小林コミュニティ協議会はことし6月から、日常の移動が困難な1人暮らしの高齢者らを支援するため、月2回の有料の買い物移動支援を始めた。区内の社会福祉法人から福祉車両を借り、1人1回300円で支援を希望する人の自宅とスーパーなど店舗との間を往復する。

開始以来5人の利用があり、好評を得てきた。7日には80歳の女性宅に出向き、2キロほど離れたスーパーへの移動支援を行った。目が不自由な女性は日ごろ、訪問介護ヘルパーらに買い物代行を頼むなどしてきたという。同行したヘルパーと塩鮭や肉などを買い込み、「店に出かけて自分で選ぶのも楽しみの一つ。地域の支えがある所に住んでいてよかった」と笑顔を見せた。
支援は無料にすることも検討したが、持続可能な取り組みとするために有料とした。小林コミ協会長の小田信雄さん(74)は「公共交通の維持にかける経費を、地域の移動支援に投じていく時機が来たのではないか」と話す。
地域の移動支援というミクロな視点での活動が進む一方、区全体の移動手段の将来を考える議論も行われている。
南区の商工会青年部や白根青年会議所などがつくる「にいがた南区創生会議」。17年に設立された会議は10~20年後の区の明るい未来を実現するため、市に対して、にぎわい創出などの方策を提言してきた。

1日に南区役所で開かれた理事会では、役員ら12人が集まり、本年度取り組んでいる事業計画について意見を交わした。
会議のメンバー4人は12日、相乗りの配車サービスを導入している富山県朝日町を視察。先進地で実践されているサービスを学んで区内への導入を図るとともに、技術革新が進む自動運転が公共交通にどう生かされるかにも注目している。
創生会議会長の梅津繁明さん(42)は「先進的な取り組みと新しい技術については常に知識を得ておきたい。将来のまちづくりの議論に生かしていきたい」と話している。
[こんな地域を目指します]
食、体験通し交流人口拡大
梅津繁明さん(42) にいがた南区創生会議会長

創生会議は「好循環を生み出す」をテーマに、さまざまな業種の若手メンバーを中心に活動しています。
今取り組んでいるのは、南区の特産である果樹の病気を防ぐ取り組みです。研究段階なので手法は明かせませんが、新潟薬科大学の客員教授と連携し、区内の畑で実験を行っています。
果樹の病気を防ぐことで農薬を大幅に減らし、安心安全な農作物としてブランド力を上げられます。経験や勘に頼らず客観的に判断する手法を確立できれば、若い人の農業参入にもつながると思っています。
ほかにも弥彦温泉や湯田上温泉などの周辺観光地との連携も重要なテーマです。南区には宿泊施設はあまりないけれど、魅力ある食材や体験施設がある。南区の観光資源を活用して、交流人口の拡大を目指しています。
まちづくりに取り組むのは、自分たちの子どもや孫に住みよい地域を残したいという思いからです。人が減るのは仕方ないけれど、南区の強みを生かしていけば、住みたくなる人もいるのではないかと思っています。
お薦めスポット
<白根グレープガーデン> 四季通じ果物狩り
白根グレープガーデンは四季を通じて果物狩りが楽しめる人気スポットだ。本格的な果物狩りシーズンを迎え、休日ともなれば団体客や親子連れら1日に3千人が訪れる。
果物はブドウやモモ、イチジクなど15種類ほどを栽培しており、特にブドウは巨峰やシャインマスカットなど約40品種と充実している。

旬の果実を使ったジェラートやスムージーも人気。来年3月にはフルーツサンドやパフェを提供するカフェのオープンを予定し、建設が進む。
果樹園近くの広場では、ヤギやウサギに餌をやって触れ合うこともできる。園主の笠原節夫さん(61)は「農園の非日常感を楽しめる。リラックスしに来てほしい」と話した。
ブドウ狩りは11月上旬まで。食べ放題は中学生以上1200円。正月三が日を除き無休。問い合わせは025-362-5535。

<しろね大凧と歴史の館> 30ヵ国の500点展示
しろね大凧と歴史の館は、高さ15メートルの吹き抜けのホールを見上げると、伝統行事「白根大凧合戦」で使われる24畳サイズの大凧が掲げられている。
江戸時代から続く大凧合戦にまつわる歴史資料のほか、日本各地の郷土色あふれる凧からアジア、欧米など約30カ国の凧まで約500点を展示する。

凧作りや風洞実験室での凧揚げを体験することもでき、3D映像室では毎年6月に行われる合戦の様子が臨場感たっぷりに流れる。
笠井正信館長(62)は「凧の美しさや歴史、舞い上がる仕組みを大勢の人に知ってほしい」と話した。
大人400円、小中高生200円、未就学児無料(土日祝日は小中学生無料)。第2・4水曜、年末年始休館。問い合わせは025-372-0314。
