第9弾 新潟市
東区ってこんな場所!
新潟日報 2022/08/17
新潟日報社が地域の魅力を発信するプロジェクト「未来のチカラin新潟市」の一環で、政令市新潟を構成する八つの区にスポットを当てます。8区ではそれぞれ、地域を元気にしようと住民有志やグループが奮闘しています。さまざまな課題の解決の糸口を探り、未来に向けて進もうとする取り組みを紹介します。今回は東区編。

人口/133,589人(2022年7月末現在)
世帯数/62,122世帯(同)
面積/38.62平方キロメートル
イメージカラー/アクアブルー(豊かな水辺に加え、空港や港など、空と海の玄関口として躍動感あふれる東区を表現)
[概要]
東区は、旧新潟市域の、信濃川と阿賀野川の河口に挟まれたエリアで日本海に面している。区の真ん中には、かつて阿賀野川の河道だった通船川が流れている。住宅地に貴重な自然環境が残る砂丘湖「じゅんさい池」がある。
本県の空の玄関口である新潟空港、豪華客船も寄港する新潟西港がある。国道7号線(新潟、新新バイパス)、JRの信越本線や白新線が通る。充実した交通網を生かし、市内有数の物流拠点で産業集積地でもある。
土地利用の割合は、市全体と比べ、農地は少ない。産業では、製造業や卸・小売業の割合が高く、製造業従事者は市内で最も多い。
「産業のまち」を身近に
旧工場を拠点、住民ら魅力発信
東区は明治時代後期、山の下地区に工場が建設され、石油事業の関連機械の製造が始まった。大正期にかけ、下請けの中小の工場などが建つようになり、多くの労働者が住むようになったという。今でも、山の下地区に加え、木工団地や卸団地といった工業団地を中心に金属加工、食品、製紙業など多様な産業が息づいている。
区は「産業のまち」のイメージを核に、将来の産業の担い手となる人材育成、就職、定住を見据えた施策を展開。特色ある企業の紹介動画を作り、子どもの総合学習の受け入れ企業の開拓、ものづくり関連企業と地元県立大との連携強化やプラットフォームづくりなどを進めている。
ただ、住民からは「どんな企業があるか分からない」といった声も聞かれる。東区は南北に、工場地帯と造成された住宅地が交互に連なる。多くの住民は、道路から大きな工場を見る以外に、「産業のまち」を意識する機会が少ないのが現状だ。

巨大な工場が立ち並ぶ山木戸地区の一角に、かつて機械の部品の原型を木で作っていた旧荒川木型工場の建物がある。東区の地で「木型屋」として約50年続き、2010年に廃業したが、当時の機械や工具がそのまま残されている。
この建物を活用しようと、同社の経営者だった父を持つ荒川洋子さん(60)が2019年、「キガタヤ・プロジェクト」を立ち上げた。知人や住民10人がメンバーとなり、町工場や山木戸の歴史に詳しい人を招いて話を聞いたり、工場を開放したりするなど、周辺の工場地帯と山木戸の魅力を関連付けたイベントを開催している。
荒川さんは「木型屋の歴史に思いをはせ、痕跡から現状を再認識し、未来につなげていくような、この場所でしかできない活動をしていきたい」と語る。
歴史や思い出、地図に盛る
プロジェクトでは昨年、市の地域提案型空き家活用事業を利用し、山木戸地区の昔と今の両方の様子を重ねた地図を作成。企業の会長や住民らの昔話や、地域への思いなどを描き込んだ。
今年は区と連携し、範囲を区全域に広げ、歴史やメンバーの思い出を加えた地図を新たに完成させた。地図は区役所に置かれるほか、区内の小中学校に配布する予定だ。
メンバーの一人で、地図を描いた八木憲行さん(75)は「子どもたちには、地図を通して自分たちの地域を知り、未来や将来を考えるきっかけにしてほしい」と期待する。
荒川さんは「県都の中心駅の近くに、こんなに大きな工場地帯があるのは珍しいし、工場地帯と住宅地が近くで混在している場所も、ほかにはない強みや魅力になるのではないか」と指摘。「若い世代には、この特長を生かしてさまざまな可能性があることを知ってもらいたい」と語った。

[こんな地域を目指します]ものづくり精神継ぎたい
高校3年
三條目
樹
さん(17)
キガタヤの近くに住んでいます。もともと、車やものづくりが好きなこともあり、中学の時の美術教諭でもあるキガタヤ・プロジェクトの荒川洋子代表から、活動に誘われました。毎月のようにイベントに参加しています。
キガタヤには、ビンテージ感のある機械が残っていてわくわくします。道具もきれいに手入れされており、物を大切にしてきたことが伝わります。イベントに参加した際、東区には世界に誇る技術がたくさんあることも学びました。
これまで地域について、工場地帯だなとか、工場夜景がきれいだなと思うくらいでした。でも、キガタヤに来て、周辺に想像以上にたくさんの企業があることに驚きました。
キガタヤに息づくものづくり精神が地域で受け継がれるといいと思う。私も自立して地元に戻り、そういう精神を大切にした整備士になれるよう頑張ります。
お薦めスポット
<新潟空港> イベントで旅気分
1930(昭和5)年に開港した新潟空港は、札幌(新千歳)、名古屋(小牧)、大阪(伊丹)、福岡など全国7路線が就航。新型コロナウイルス禍の前はソウル、上海など国際線4路線も定期就航していた。2021年度の利用者はウイルス禍の影響で38万8千人だった。
空港には、飲食店や土産物店があるほか、イベント「HAPPY そらフェスタ」を年3回ほど開催。就航地のPRブースを設置したり、展望デッキを無料開放したりして、空港の利用促進を図っている。
新潟空港ビルディング管理課の保科英武係長(39)は「旅行への気分を高めるようなイベント、飛行機を利用されない方も楽しめるイベントを企画している。ぜひ足を運んでほしい」とPRした。

<子育て施設> 豊富な遊具が人気
中心市街地に近く、交通の利便性も良いことから、子育て施設や遊び場が充実している。
山の下みなとタワーの隣接地にある「山の下みなとランド」(4~11月開園)は、豊富な遊具で親子連れに人気だ。港町をイメージした帆船の形をした大型遊具をはじめ、滑り台など数多くの遊具を設置している。
川崎市から家族で遊びに来た教員、金内真由美さん(44)は「船の遊具や長い滑り台は、子どもたちがとても楽しんでいた。ぜひまた来たい」と笑顔だった。
寺山公園に併設した「子育て交流施設い~てらす」は、新潟バイパス竹尾インターチェンジすぐそば。室内施設で、小学3年生まで無料で遊べる。区役所2階には、小学2年生まで利用できる「わいわいひろば」もある。

<工場夜景> 光が輝き幻想的に
「産業のまち」として栄えてきた東区は、産業観光の一環で、工場夜景などをPRしている。
特にフォトスポットとして近年注目を集めたのは、通船川鴎橋付近や旧国道7号沿いの工場夜景だ。巨大な建物や、煙がたなびく煙突が光で幻想的に浮かび上がる風景は、写真愛好家らに人気がある。
ほかにも、貨物ターミナル駅や、新潟西港を行き交う大型フェリー、石油タンク群なども迫力がある。
区は約10年前から夜景ツアーを企画し魅力を発信する。今年も10月に実施予定だ。
地域課の山本大寛主事(31)は「一つの切り口として、区の産業を知ってもらうきっかけになればうれしい」と話した。
