小さな手をぎゅっとにぎり、すやすやと眠り、ぼんやりと目を開ける-。新生児特有の表情を撮るニューボーンフォトグラファーの八子園子さん(50)=新潟市西区=は、活動を通じ「わが子を見つめるママの姿は、ものすごく尊い」と感じています。新生児期は、出産や育児の疲れなどからナーバスになる女性が多いといわれています。八子さんは、撮影の傍ら、育児などの悩みを聞く時間も大切にしています。落ち込んでいる様子であれば「『私は頑張っている』と声に出して、自分を褒めることが大事だよ」と伝えています。

【写真】現場でカメラを構える八子園子さん

 撮影は依頼者の自宅や里帰り先で、即席のスタジオを作って行います。ママ、赤ちゃんとのコミュニケーションを大事にしているという八子さん。まず、赤ちゃんのチャームポイントを見つけながら「その子を大好きになるところから」始めます。育児経験を生かし、ママの気持ちに寄り添って進めます。自然体の赤ちゃんのかわいさを収めることが中心ですが、自身が最も撮りたい一枚として、母子が一緒に写る「幸せの光景」も撮ります。

新生児を撮影する八子さん。時には赤ちゃんの家族からアシストしてもらいながら、設営、撮影、編集を1人で行う

 八子さんは、新生児の撮影技術を学ぶ民間の講座を修了し、2019年12月に「ニューボーンフォトグラファー」として活動を始めました。これまでも女性や子どもを被写体とするフォトグラファーとして仕事をしてきましたが、この時期を撮るにはより専門的な知識が必要になるといいます。講座では、産後の女性の心身や新生児の特徴、自宅での撮影方法なども学びました。このほか、ベビーマッサージやファーストサインなどの講師もしています。さまざまな活動の根底には、自身の育児を通じて芽生えた「ママたちの力になりたい」という強い思いがあります。

撮影用の衣装や飾りと専門知識を学んだ教材

 自分の育児は、オムツ替えのやり方さえ分からないところからのスタートだったと振り返ります。今は会員制交流サイト(SNS)などで、育児を楽しむ女性の姿を目にする機会が多いですが、新米ママたちには自身のエピソードを話します。「うまくいかないのは自分だけではないよ。一気に何でもできるママになろうとせず、まずは自分をいたわって」とエールを送ります

八子さんの作品

 新型コロナウイルスの影響もあり、八子さんは育児に悩むママが気軽に友人や専門家に相談できる機会が少なくなっていると感じています。気丈に振る舞っているように見えながら、実際には悩みを抱え込んでいたママの話も聞いたそうです。

 これらをきっかけに、活動を通じて出会ったママたちのためにできることはないかと考えました。「頑張りすぎている場合も、顔を見ることができれば気付いてあげることができるのでは」と、育児の情報や悩みを共有するオンラインサロンを開設する準備を進めています。「ちょっとおせっかいなくらいに、長く続く子育てを応援していきたい」と語ります。

「幸せな表情を見せるママと赤ちゃんと時間を共有すると、私も大きな幸せを感じます」と話す八子さん

 撮影は親にとって「わが子をいとおしいと思う気持ちにどっぷりと漬かれる時間」。八子さんは、新生児期の子育ては大変だからこそ、撮影で楽しかった思い出を作ってほしいと願います。子育ては無理をしなくていいこと、幸せな時間であることをこれまで以上に伝えていくことを目指しています。


◇「にいがた、びより」の連載「こそだてエール」では、県内の子育ての先輩や育児真っ最中のパパ、ママを紹介していきます。仕事も子育てもがんばる皆さんに、またこれからパパ、ママになる皆さんに温かいエールを届けます。