
公認会計士で税理士の内山智絵さん(35)=新潟市中央区=は、夫と長女(4)、次女(1)の4人家族です。次女には病気があり、医療的ケア児の育児と仕事を両立させるため、今年、長年勤めた監査法人を退職し、自分のペースで調整しながらできる働き方にシフトしました。個人で会計事務所を開業し、起業する女性に会計面でサポートすることにも挑戦します。内山さんは「ママたちのやりたいという思いを応援したい」と話します。
【写真】ママ向けのセミナーで起業時の税務について説明する内山智絵さん=新潟市西区
公認会計士としてキャリアをスタート
新潟大在学中に公認会計士試験に合格した内山さんは、大学を卒業後の2009年、大手監査法人の新潟事務所に就職し、企業の会計監査に携わりました。仕事はやりがいがあり、いつかは事務所のパートナー(監査最終責任者)になりたいと、夢中で仕事に励みました。
結婚後、16年に長女を出産。1年以上休むことに不安を感じ、産後半年で職場に復帰しました。最初は時短勤務でしたが、徐々に責任ある仕事を任され、夫と家事や育児を分担しながら忙しい日々を送りました。仕事が時間内に終わらず、家に持ち帰り、子どもが寝てから深夜までパソコンに向かうことも多かったそうです。

妊娠中に次女の病気が判明
子育てと仕事の両立に苦労する中、第2子を授かりました。妊娠中、医師からおなかの赤ちゃんに「手術が必要なレベルの疾患がある」と告げられました。「わたしが悪かったのだろうかと自分を責めました。これからどうしたらいいのだろうかと不安に駆られ、ショックで仕事も手につかなかった」と振り返ります。頭の中は赤ちゃんの病気のことでいっぱいになる中、切迫早産で入院。そのまま産休に入りました。
19年春に生まれた次女はすぐに新生児集中治療室(NICU)に入院。内山さんは自宅で搾乳した母乳を病院に届ける日々でした。新生児と一緒には退院できませんでしたが、「不安でいっぱいだった妊娠時より、生まれた後は先の治療のスケジュールも分かり、少し気持ちが落ち着きました」と内山さん。その後手術を経て退院。翌年には2回目の手術を受けました。
次女の治療は今後も続きます。手術や検査などで入院すれば、24時間付き添いが必要で、長女の育児もあり、夫婦で協力して乗り切らなければなりません。次女に何かあったとき、自分がすぐに対応できる状態でいたい―。育休後、職場に復帰すれば看護と仕事の両立は難しいと考え、退職を決意しました。

自分のペースで仕事をしようと起業

公認会計士に加え、退職後には税理士やファイナンシャルプランナーの資格も取得し、今春、自分のペースで働こうと個人の会計事務所を開きました。今は起業や独立を目指す女性を会計面でサポートしたいと考えています。
病院では同じように病と闘う子供を育てるママがたくさんいました。働きたくても時間がなく、これまでのキャリアを諦めるケースもあります。「病気の子がいても、仕事ができる仕組みがあるといい。いろいろな事情で社会復帰できていなくても、『何かしたい』と考えているママの背中を押していきたい」と考えています。
社会人になった当初に思い描いていたキャリアとは違うけれど、前向きに新たな挑戦を始めた内山さん。「次女の病気があって、視野が広がり、新しい出会いもたくさんあった。今の自分の道は、次女は引っ張ってくれた運命かな」と笑顔で話しました。

◇「にいがた、びより」の連載「こそだてエール」では、県内の子育ての先輩や育児真っ最中のパパ、ママを紹介していきます。仕事も子育てもがんばる皆さんに、またこれからパパ、ママになる皆さんに温かいエールを届けます。
(1)「ねんど母さん」髙田香代さん(新潟市中央区)
(2)漫画エッセイスト ちゃい文々さん(新潟市)
(3)助産師 佐久間沙都美さん(新潟市北区)
(4)ニューボーンフォトグラファー 八子園子さん(新潟市西区)
(5)フリーアナウンサー 冨髙由喜さん(新潟市中央区)
(6)女性向けマッサージサロン経営 太田千恵子さん(新潟市西区)
(7)公認会計士・税理士 内山智絵さん(新潟市中央区)