
ベトナムでの人材育成に取り組んできた藤島安之さん=東京都千代田区
新潟県柏崎市出身の藤島安之さん(77)は、国の官僚や商社の経営者としての経験を生かし、日本とベトナムの交流促進に尽力してきた。日本型のものづくり教育を行う大学の設立に協力するなど、ベトナムでの人材育成を進め、2024年秋には現地の大学から名誉博士号を授与された。「日本の人材不足は深刻だ。優秀なベトナムの人材と日本企業のマッチングを手助けしていきたい」と意欲を語る。
新潟県柏崎市出身。柏崎高校、東京大学を出て、通商産業省(現経済産業省)に入った。資源エネルギー庁長官官房総務課長、通産相官房審議官など、主に産業政策の推進に携わり、1998年からはパナマ大使を務めた。
2001年に退官し、総合商社の日商岩井(現双日)に勤務。副社長などを歴任した。ベトナムとの関係が深い同社で働いたことが、自身もベトナムと深く関わるきっかけになった。
双日に勤務していた当時は、経済発展が進むベトナムに日本企業が続々と製造拠点を設け、現地での人材確保が課題となっていた。「ベトナムのさらなる工業化と日本企業の人材確保のために、日本のものづくりを教える大学が必要だと思った」と振り返る。
参考になったのが、近隣国タイでの動きだった。タイには、日本型のものづくりや日本語を教育する大学が設けられ、日本企業に卒業生を送り出していた。
「同じような大学をベトナムにもつくれないか」と...
残り770文字(全文:1350文字)