えちごトキめき鉄道(新潟県上越市)が10月に5年ぶりの運賃値上げに踏み切る。収益改善につなげる狙いだが、構造的な赤字体質を抜本的に改善する効果はなく、沿線人口の減少などを背景に経営環境は依然厳しい。人件費やエネルギーコストの上昇だけでなく、老朽化施設の更新も控え県や沿線自治体からの支援を求めている中、経営努力を示して環境整備を図った側面もありそうだ。

 「これで赤字が黒字に変わるということではない」。平井隆志社長は、12日の会見で厳しい表情を崩さなかった。値上げの増収効果は年間7200万円ほどだが、10月から半年分の値上げ効果が見込める2025年度の決算見込みは3億円超の純損失。通年で値上げをしたとしても、赤字をカバーできない計算となる。

 トキ鉄は開業当初から赤字が続いてきた。主な乗客となる沿線人口の減少に加え、新型コロナウイルス禍で乗客が激減し、現在の中期経営計画期間の21年度以降の純損失は5年間で累計7億円超に上る見通しだ。

 トキ鉄はリゾート列車「雪月花」の導入や旧国鉄車両を使った観光急行の運行などの誘客に注力してきた。感染禍により21年度に8591人まで落ち込んだ1日平均利用者数は、24年度上半期に9822人へと徐々に回復している。

 それでも収支が苦しいのはエネルギー・資材価格の高騰などでコストが大きく引き上がっているからだ。人手不足もあり人件費も上昇している。県と沿線3市はこれまでも経営支援を続けてきたが、人口減少が進み、さらに厳しい状況が見込まれるため、新たな支援スキームを検討している。26年度から...

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