
今思えば、あのちぐはぐな感覚は序章に過ぎなかった。1月下旬、私はトランプ大統領の就任式などの取材を終え、ワシントン近郊の空港で帰国の便を待っていた。ふと小用に立ち、そこで目にした光景に戸惑った。
トイレには男女の区別がなく、清潔なスペースに共用の個室がざっと20個、ずらりと並んでいた。社会的な性差別をなくす「ジェンダー・フリー」の考え方を、ここにも反映させたということなのだろう。ちなみに、このトイレがあったのは、アメリカの航空会社のラウンジだが、ここまで「進歩的」に徹底した例は初めて見た。
だがこの前日、トランプ大統領は就任演説で、「本日から連邦政府が認める性別は男性と女性だけだ」とする大統領令を発出。性的マイノリティーを切って捨てた。多様性重視のバイデン前政権の価値観を叩(たた)き壊して見せたのだ。するとあの共用トイレの行方は? ...
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