
古くから川を利用した舟運が盛んで、近現代には鉄道や幹線道路が整備された新潟県の県央地域では、交通に関連のあるエピソードは多い。ものづくりを究める職人の街だからか、趣味にこだわり乗り物に関するグッズを収集する人も見られる。一方、時代の流れの中で、人々の記憶から薄れていってしまうものもある。県央と乗り物のゆかりを追ってみたい。
三条市内の倉庫で、ピンクのクラシックカーが目に飛び込んできた。米自動車大手、ゼネラル・モーターズ(GM)のキャデラックだ。大きくてごつごつした重厚なボディーから見て相当の年代物に違いない。往年の高級クラシックカーがなぜここにあるのか、取材を進めた。
三条市島田2にある、この倉庫には、空き家に残った家具や食器などを新たな持ち主へつなぐ再利用サービス「REYOO(りよう)」の取材で訪れた。この事業に取り組む一般社団法人「燕三条空き家活用プロジェクト」(神明町)が、集まった物を収納したり展示したりしていた。
「まさかキャデラックが再利用サービスの回収品のわけはあるまい」と思い、この法人に問い合わせると、車のオーナーを紹介してくれた。倉庫の所有者でもある市内の会社役員の30代男性だ。
匿名を条件に取材に応じてくれた男性は、現在の車とは趣が異なる重厚な存在感や、古い米国文化の空気が感じられるキャデラックに子どものころからあこがれていたと話す。「いつか買いたいとの思いで頑張って仕事をしてきた」と振り返りながら車を見つめる。
購入資金の見通しが付き、売買情報をチェックしていたところ、4年ほど前に群馬県のオーナーがキャデラックを売却しようとしていることを知った。購入したのがこのピンクのキャデラック。1975年ごろのタイプという。
車検を通しており、家族を乗せてドライブすることもある。「最初は左ハンドルに慣れないこともあって難しかったけれど、徐々になじんできた」と笑顔で話す。
三条市でキャデラックといえば、名誉市民のプロレスラー故ジャイアント馬場さんの愛車が有名だ。そちらの色は白で、同じころのタイプとみられる。市歴史民俗産業資料館別館「ほまれあ」(元町)で常設展示されている。
男性は「しっかりとした状態で保存された1970年代のキャデラックが三条には少なくとも2台あることになる」と話す。
実は、ピンクのキャデラックがあった倉庫は、...











