古くから川を利用した舟運が盛んで、近現代には鉄道や幹線道路が整備された新潟県の県央地域では、交通に関連のあるエピソードは多い。ものづくりを究める職人の街だからか、趣味にこだわり乗り物に関するグッズを収集する人も見られる。一方、時代の流れの中で、人々の記憶から薄れていってしまうものもある。県央と乗り物のゆかりを追ってみたい。

 JR燕三条駅の新幹線ホームには、普段は使用されない13番線がある。上り(東京方面)は12番線、下り(新潟方面)は11番線を発着=図参照=。上りホームの反対側にある13番線には線路が敷かれてはいるが、通常、列車が通ることはない。新潟県内の上越新幹線5駅(ガーラ湯沢駅含まず)、北陸新幹線2駅のうち、通常ダイヤに組み込まれていない新幹線ホームがあるのは燕三条駅だけだ。どのように利用されているかを調べると、中越地震の際に活用されたことが分かった。

 三条市と燕市の境界にある燕三条駅は、上越新幹線が開業した1982年に設置された。JR東日本新潟支社(新潟市中央区)に取材したところ、13番線は「輸送の弾力性の確保と、車両基地からの試運転列車の折り返しに対応して設置している」との説明だった。

東京行き新幹線が発着する12番線(左)の向かいにある13番線(右)=JR燕三条駅

 通常ダイヤでは燕三条駅で折り返す新幹線は存在しない。ただ、災害などで列車を折り返す必要がある場合、上り、下り1線ずつの乗り場だけでは難しくなる。乗り場が3線あることで、一定の時間、車両を停車させておくことができ、非常時でも比較的余裕を持ったダイヤ設定が可能になる。

 2004年10月23日の中越地震発生で運転を見合わせた新幹線は、翌24日に東京-越後湯沢で運転を再開。30日に燕三条-新潟も運転を再開した。燕三条-新潟では1日18往復で折り返し運転し、うち9往復が13番線を使用した。11月4日に長岡-燕三条も運転を再開するまで続いた(全線運転再開は12月28日)。

▽羽越新幹線構想との関連は?

 上越新幹線の駅で使われていないスペースといえば、長岡駅の「幻のホーム」とされるエリアがある。柏崎などを経て北陸方面へつながる新幹線整備を想定したとの説が残る。ここは燕三条駅の13番線と異なり、線路は敷かれていない。

 燕三条駅の13番線についても、秋田、青森方面へつながる羽越新幹線構想を踏まえたものではないのだろうか。JR東日本新潟支社に過去の記録を確認してもらうと、「羽越新幹線構想に関わる文言の記載は、確認した限りではなかった」ということだった。

▽「余裕を持たせやすかったのでは」

 他の駅にはない乗り場があるのはなぜか。...

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