【2021/04/22】

 ゲームの中に入れば、学校の友人と“再会”できる。新潟県内の高校1年、中田健さん(15)=仮名=は、無料でダウンロードしたオンラインのバトルロイヤルゲームに夢中だ。帰宅するとすぐにテレビ画面に向かい、ゲームに没頭する。

 このゲームは参加者同士で撃ち合うなどし、最後の1人か、複数人で組むチームで生き残るのが目的。ヘッドホンを通し、友人と会話しながらプレーできるのが魅力だという。「銃は男のロマン。ゲームもリアルでかっこいい」と熱く語る。2万円ほどかけ、操作するキャラクターを自分好みに改良している。

 親から心配されるのは、プレー時間の長さだ。平日でも午前2時台まで続き、学校で居眠りして注意されたこともある。休日には多いときで計9時間。頭痛がし、目はしょぼしょぼするが、やめどきが難しい。

 1回のプレー自体は最長で30分程度だが、約束した学校の友人が時間差でゲームに参加してくるため、延々とゲームを続けてしまう。

 他に趣味がなく、将来の目標を描けず勉強などにやりがいを見いだせないこともゲームにはまってしまう一因だと感じている。「ゲームで敵を倒したり最後の1人まで生き残ったりすると達成感がある」

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 オンラインゲーム市場は年々、急速に拡大している。一般社団法人「コンピュータエンタテインメント協会」(東京)によると、国内のオンラインゲーム市場は2019年で約1兆2510億円と、10年(約2400億円)の5倍に。19年の市場全体(約2兆890億円)の6割を占める。

 多数の参加者を呼び込むため、無料でプレーできるゲームも多い。ただキャラクターを強くしたり特殊なコスチュームなどをそろえたりするためには、課金が必要となる。中田さんの父親(44)も毎日ゲームに接続するとポイントがたまる仕組みなどを挙げ「プレーヤーをつなぎ止めようとするえげつなさを感じる」と指摘する。

 同協会の担当者は「子どもによる課金や長時間プレーによるトラブル防止のためにも、親はゲーム機に年齢設定といった機能制限をかけてほしい」と促す。

 ゲーム依存に詳しい「かとう心療内科クリニック」(新潟市江南区)の加藤佳彦院長(64)は、孤独感の強い人ほどゲームの中で他のメンバーに頼られることに意義を見いだし、「置いてきぼりになる恐怖から参加が義務になっていく」と強調する。その上で親はむやみにゲームを取り上げず、子どもの悩みに耳を傾けるよう勧める。

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 親の心配は尽きない。「ファミコン世代」の中田さんの父親は、昨年の感染禍での緊急事態宣言による休校期間でも「ゲームで友人とのつながりを保つことができた」とプラス面を挙げる一方で、オンラインゲームには明確な終わりがないと危惧する。

 息子のゲーム時間は以前より減った気がする。だが、高校進学のお祝いとして買ってあげたスマートフォンを肌身離さぬ状態で、友人と連絡を取り合っているという。「前から欲しがっていたし、周囲の友人も持っているそうなので、つい買ってしまった」

 スマホ依存にならないよう、息子に携帯料金プランを調べさせ、月々の出費を意識させた。さらに「成績が今より下がるなら解約する」との条件も付けたが…。

 父親は「スマホと上手に付き合っていけるのか、不安は大きい。与えた親の責任もあるけれど」とため息をついた。