【2021/05/05】

 インターネット環境の整備やスマートフォンの普及とともに、患者の増加が懸念されている「ゲーム・ネット依存」。国内で最も早い2011年に、専門の研究部門を設置したのが久里浜医療センター(神奈川県横須賀市)だ。同センターでは年3回、患者の家族を対象にしたワークショップ(WS)を開き、講義や家族間の交流を通して知識や対応の仕方を共有している。遠方の家族にも配慮し、同センターを未受診でも参加できる。丸一日かけて行われた3月のWSの様子を報告する。(同センターではゲーム依存も含めて「ネット依存」と表現しており、本文も統一します)。(報道部・大西泰三)

 講義では、精神科医と精神保健福祉士が現状と家族の対応などを説明した=写真=。

 同センターのネット依存症患者の大半がオンラインゲームをプレーしているという。市場は年々急拡大し、2019年は約1兆2千億円と、ゲーム全体の大半を占める=グラフ参照=。

 ネット依存で睡眠障害による昼夜逆転が生じ、「不規則な食事で栄養状態は低い。ゲームで座りっぱなしの状態が続くため、エコノミークラス症候群の兆候も多い」。脳にも他の依存症と同様に前頭葉が萎縮し、記憶力低下の影響がみられるという。

 また、子どもにとって親は回復させる役割を担う「キーパーソン」となるため、八つの基本的な対応=表参照=を踏まえるよう求めた。特に「誤りを正したい衝動には注意」が必要で、「言われた側は無視、反論、攻撃に転じることから逆効果になる」。子どもが後悔したり、体調の悪さを訴えたりしたときがチャンスで「ルール作りや医療機関への受診など建設的な対話につなげてほしい」。

 親よりも友人や教諭など第三者の方が素直に聞くことが多いため、周囲の助けを借りることも時には必要とし、「親自身も休息し自分のしたいことを優先するのも大切」と呼び掛けた。

 ネット依存の患者は年々増えているとみられ、国内の中高生のネット依存は推計で12年の52万人から17年には93万人に増加している。

◆話し合い、ルール学ぶ グループワーク

 グループワークでは、精神保健福祉士や臨床心理士らが進行役を務め、子どもの年齢の近い親が4、5人ずつで班を作った。今回は隣県だけでなく関西方面も含め17人が参加。本県からの参加者はいなかった。

 班ごとにテーマを決め、子どもとのルール作りなどを話し合った。プレー時間のルールを破ったケースでは、「事前に親子で決めたペナルティーを課すことで関係悪化を防いだ」との例が上がった。

 子どもとの会話のため「親もプレー動画を見て、ゲームを知る必要がある」との声も。複数人で協力し合うゲームには「部活をイメージすると、やめられない気持ちに少しは共感できる」という意見もあった。

 終了後、高校生の息子がスマホゲームにはまり、不登校になっている長野県の40代の母親は「声がけやルール作りなどの具体例を知ることができて良かった」と話した。

◆自分責めず子と接して 回復者家族の体験談

 ネット依存から回復傾向にある20代の息子について、県外の50代の母親が、体験を語った。

 優等生だった息子の異変に気付いたのは高校1年の時。午前3時ごろに目覚め、息子の部屋をのぞくと、一心不乱に携帯でゲームをしていた。目は充血し、声を掛けてもうつろ。その後に不登校となり高校も中退、昼夜逆転の引きこもり状態となった。「学校というつなぎ止める場所がなくなったことで悪化した」

 体の不調を訴える息子を連れて久里浜医療センターを受診した。引きこもり状態のため「肺の機能が40代」との結果に息子はショックを受け、生活を記録することを医師と約束した。

 母親は息子にできるだけ指図しないようにした。食卓で塩を取ってもらうなど小さなことでも「ありがとう」と言い、コミュニケーションを取るよう努めた。

 大きな転機は、同センターが関わる8泊9日のサマーキャンプに参加したこと。同世代と交流した息子は、「久しぶりに血が通っているように感じられた」。

 息子は高卒資格を取り大学受験は2年目で合格。念願の大学生活は起床などで大変な時もあったが、卒業して4月に就職した。

 ただ、今でも何もない休日は一日中ゲームをし、危うい感じがする。「回復には長い時間がかかる。親も疲れ果てる時があるが、自分を責めたりせず子どもと接してほしい」