【2021/04/29】

 ボードに立て掛けてあるファイルの「やくそくごと」には、「参加時間中は携帯電話の電源をオフ」「人の話を聞く」などと書かれている。ソファが並ぶ部屋はゆったりとした音楽が流れ、まるでカフェのような雰囲気だ。

 新潟県内唯一のインターネットやゲームの依存症外来がある「さいがた医療センター」(上越市大潟区)の一室。県内各地から訪れた小学生から20代の男女7人とセンターのスタッフが輪になり、カードゲームを楽しんでいた。

 同センターが毎週木曜、外来受診者らを対象に行う治療プログラム「おふらいんカフェ」のひとこま。参加者がやりたいことを自分で決め3時間、積み木ゲームや鬼ごっこなどで遊ぶ。調理実習や学校の宿題をする日もある。ネットやゲーム以外の物事の面白さや、やりがいを感じてもらうことが狙いだ。

 カフェでは携帯電話の電源をオフにすることが決まりだが、ゲームの話はしてもいい。この日も「コントローラーを持つ手汗がすごい」「アドレナリンがどばどば出る」といった「あるあるネタ」で盛り上がった。一緒にお弁当を食べ、体育館でフライングディスクやボール遊びなどで思い思いに遊ぶ。帰り際、スタッフに「さようなら」とあいさつする参加者の表情は晴れやかだった。

 治療プログラムを担当する看護師の奥山沙耶さんは「人とご飯を食べたり、話したりするのが楽しいと思って、現実も捨てたものではないと感じてもらえれば。学校や社会へ戻る中間地点のような役割でありたい」と説明する。

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 同センターは2019年6月「ゲーム・インターネット依存症外来」を開設。ことし2月末までに約80人が受診した。9割は男性で、10~15歳が半数を占める。ゲームのやり過ぎで離職した人や、新型コロナウイルスによる長期休校の影響で、オンラインゲームなどにのめり込み不登校になった子どももいるという。

 同センターの佐久間寛之副院長は、ゲーム依存には、孤立感や挫折体験などを抱えた人が多いことを挙げ「現実とうまく向き合うことができず、ゲームに逃避している。ゲームを取り上げても本人の苦痛が増すだけで根本的な解決にはならない」と指摘。おふらいんカフェなどを通して、「気持ちが癒やされるなど現実の醍醐味(だいごみ)に気付いてもらうことが、依存症の回復には重要だ」と強調する。

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 受診やおふらいんカフェへの参加を通し、登校できるようになった子や、仕事に復帰できるようになった人もいる。

 1年ほど前からおふらいんカフェに通う県内の20代のアルバイト男性は、中学生のときにスマートフォンのゲームを始めた。通信制の高校時代は家にこもって熱中した。食事の時間以外、2日間やり続けたこともある。高校卒業後に就職した介護の仕事は、ゲームのやり過ぎなどが原因で遅刻するようになり、続けられなくなった。

 現在はゲーム時間をコントロールできるようになってきたが、少しでも時間を減らそうと毎週カフェに参加している。「運動するので、疲れて眠る。この日はほぼスマホゲームはしない」

 カフェに初参加の子の面倒もよく見る。年が離れた子にとって兄のように親しまれる存在だ。カードゲームでは、小さい子が有利になるように気を配る。その子が近寄ってきてこっそりと「助けてくれてありがとう」と言ってくれる。

 「みんなと会って話をするのが面白い」。リアルの良さを実感している。